機敏に自己革新を 外国人教員を教授会メンバーに B・ストロナク 米テンプル大日本校学長
大学開国インタビュー(1)

2013/1/18 2:00
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 グローバル化が加速する時代に、大学はどう変わるべきなのか――。日本経済新聞朝刊1面の連載企画「大学開国」は、東京大学の秋入学構想をきっかけに本格化した大学改革のうねりとその深層をとらえてきた。第6部「改革への提言」の連載に合わせて、大学のトップや各界の有識者にインタビューし、改革のキーポイントを指摘してもらった。

米国の州立大学、テンプル大日本校のブルース・ストロナク学長は過去に横浜市立大学長も務め、日米双方の大学事情に通じる。インタビューでは日本の大学について「意思決定がうまくない」「人事がグローバルでない」などの課題を指摘。東京大の秋入学構想を「間違いなくよい」と評価しつつ、教員評価の充実、高校教育改革などの必要性を強調した。

――日本の大学に欠けているものは何か

「人事のグローバル化を」と説くブルース・ストロナク氏

「人事のグローバル化を」と説くブルース・ストロナク氏

「教育に問題が多い。教員は研究志向で、ゼミには興味があるが、ほかの授業にはない。これでは学生のモチベーションは高まらない。米国の大学教員は同じ人件費で、おそらく倍の時間を授業に費やしている。もっと教育に力を入れるべきだ。また、日本では学生にも責任がない。留年することはあっても退学させられることはまずない。大学教育の質が高まらないと、将来のリーダーを育てるうえで大きな障害になる」

「ガバナンスも課題だ。大学に必ず置かれることになっている教授会は何も改革できない。大学のトップは改革の必要性を理解している。しかし、学部長レベルは意識が違う。何もやりたくない。だがグローバル競争の時代はIT(情報技術)の時代で、毎年変化する。大学も機敏に自己革新できなくてはグローバル競争に参加できない。日本の大学は理事長・学長が大きな権限を持つトップダウン型か、教授会や事務局長などミッドレベルに権限があるタイプのどちらかで、両者の中間がない。強すぎるトップダウンも、保身のため改革をしない教授会のいずれもよくない」

「トップが提案を出し、部局で議論して投げかえす。そうしたプロセスを繰り返すが、最後の結論は経営陣が下す。コミュニケーションを保ちつつ決められない事態を避けるのが望ましいが、日本の大学は上手にできていない。学長と学部長の間で調整に当たる統括者の役割が大事だが、日本は組織が縦割りで統括が難しい。プロのアドミニストレーター(大学経営の専門家)がいないのも問題だ」

――日本の大学は外国人学長が少ない

「人事がグローバルでないからだ。旧帝国大も一流の私立大も、グローバルに学長を探さないでしょう。米国の大学は選考委員会が高等教育の専門誌で告知するなどして新学長を公募する。最終選考に残る候補者は学外の人が多く、ほとんどの場合、学外者が新学長になる。常によい結果をもたらすとは限らないが、新しい考えを入れること、経営を新しい目で見ることを重視している」

――大学の国際化に必要な条件は。

「東大の秋入学構想は間違いなくよい。だが、それだけでは不十分。もっと、ほかの改革が必要だ。例えば高校・大学の接続。日本の中学・高校の教育は受験準備教育でしかない。日本でも大学では1年生からある程度、教養教育が行われているが、高校までは受験準備教育でギャップがある。外国人教員や留学生は数が多いだけでは意味がない。人種的な多様性があり、かつ日本人学生と融合させることが不可欠。教員も同じで、外国人教員が教授会メンバーになる必要がある」

「教員評価も日本は全然だめだ。(実績の審査を経て終身在職権を与える)テニュア制も言葉はあるが、本来の姿にはほど遠い。米国のテニュア制は約6年間、任期付き教員を務め、実績の評価によって終身の身分保障を与えるかどうか決める。Up or Outと言って、終身位を得られる教員は半分ぐらいだ」

――国や産業界など、社会の側は何をすべきか

「秋入学が広がっていくと就職制度が問題になる。これは就職制度をなしにしてしまうのがよい。春、夏、秋……いつ入学・卒業しても問題がないようにすべきだ。米国と異なり日本は私立大学への国家財政による支援がある。これはよいことだが、金額が少なく、中途半端だ。支援をするならする、しないならしない。はっきりさせるべきだ。田中真紀子前文部科学相が問題提起した大学の質にしても、大学間に本当の競争があれば質の悪い大学は自然になくなる。自由競争か、国家の支援か。今はそこのところが中途半端だ」

 ブルース・ストロナク氏 米国メーン州出身。タフツ大で国際関係学の博士号取得後、1976年に慶応義塾大の客員研究員として来日。慶大講師、国際大教授などを経て2005年から3年間、横浜市立大の学長を務めた。08年4月から現職。62歳

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