線虫のオス、メス探し優先し行動 脳などの性差解明へ
東京大の飯野雄一教授らは体長1ミリほどの線虫のオスがメスと一緒にいた際の環境を覚え、メスを探して行動することを解明した。大半のオスが餌よりもメス探しを優先した。性による神経系の違いがこうした行動に影響を与えているという。
神経や脳などの性差の解明に役立つ成果。米科学誌プロスワン(電子版)に5日掲載された。
線虫にはオスと雌雄同体しかおらず、雌雄同体がメスの役割を果たしている。周辺の餌の有無と塩の濃さを結びつけて学習でき、例えば飢餓状態で塩が濃い場所に放置した後、塩の濃淡がある別の場所に置くと、塩が薄い方に動いて餌を探す。
実験では、塩が濃くて餌もないが近くにメスがいる環境にオスを置いた。その後、塩の濃淡がある皿に置き直すと、今度は餌がないはずの塩の濃い方へ移動。「塩の濃い方にメスがいる」と覚えてメスを探したという。
飯野教授は「人が別れた恋人とかつて訪れた場所に来ると、心がうずくのと同じかもしれない」と話している。
雌雄同体の線虫で同様の実験をしてもオスを探さなかった。また、遺伝子組み換えで、雌雄同体の神経系を持ったオスを作ると、異性を探さなくなった。