みなし仮設費、現金支給を 検査院が厚労省に改善要求
大地震など災害時に、自治体が民間賃貸住宅を借り上げて被災者に提供する「みなし仮設住宅」について、会計検査院は4日、家主と自治体が契約を結ぶ運用を改め、被災者に家賃などの入居費用を現金支給するよう、厚生労働省に検討を求めた。検査院は、みなし仮設の費用はプレハブ仮設住宅の建設費を大幅に下回ると試算。みなし仮設の活用で「被災者ができるだけ早く家を確保できるようにすべきだ」としている。
検査院は東日本大震災や福島第1原子力発電所事故で被災した岩手、宮城、福島など7県の仮設住宅について調べた。
このうち、みなし仮設は、厚労省が1947年に出した「被災者の救助は現物支給が原則」とする通知に基づき、各県が被災者に代わって家主と賃貸契約を結んだ。しかし大量の契約事務が生じたため手続きが遅れ、入居できるまで1カ月以上かかるケースもあった。
各県からも「記載ミスなどで契約書が県、家主、被災者の間を何往復もすることがあった」(宮城県)、「職員が物件の重要事項説明を受け、入居する本人に伝える二度手間があった」(福島県)など、煩雑な手続きを訴える声が相次いだ。
もともとは各県が確保した物件を被災者にあっせんすることが想定されているが、実際には92%の被災者が自分で見つけた物件に入居していた。
検査院は、目標とした約5万戸のプレハブ完成に半年かかった一方、みなし仮設は被災直後から入居が始まったことも踏まえ「みなし仮設にはコミュニティーの維持などの課題はあるが、避難所の早期解消に効果がある」と判断。
より迅速な入居を可能にするため「家賃を被災者に直接支給することも有力な選択肢の一つで、弾力的に運用すべきだ」として、「知事が必要と認める場合は被災者に金銭を支給できる」とする災害救助法の規定に立ち返って検討するよう、所管する厚労省に求めた。
検査院によると、7県で建設されたプレハブ仮設の建設費用は1戸当たり628万円だったのに対し、みなし仮設の費用は2年間で183万円で済む。国はプレハブ建設費の上限を1戸当たり238万円としているが、土地造成費や寒冷地仕様やバリアフリー化の追加費用がかさんだためだ。
仮設建設には昨年度末までに計約3323億円が使われており、今後、撤去費用もかかる。検査院は「みなし仮設は、費用低減の面でも効果がある」とみている。
これに対し厚労省は「検査院の検査結果を精査し、今後どのように対応するか検討する」としている。今回の検査院の指摘が、被災者への現金支給を抑制してきた災害復旧のあり方の見直しにつながる可能性もある。