2018年10月16日(火)

「天守閣」復元にかける夢 名古屋城建て替えで論争

2012/11/14付
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尾張名古屋は城で持つ――。伊勢音頭でこううたわれた名古屋城。町を見下ろす5層5階の天守閣を巡り、数年前からお堀の外が少々騒がしい。

きっかけは名古屋市の河村たかし市長がぶち上げた天守閣建て替え構想だ。3年前、「名古屋の街に自慢できるものを」と、現在の鉄筋コンクリート製の天守閣を木造で建て直す大胆なアイデアを打ち出した。

建て替え論議がある名古屋城天守閣(奥)と復元中の本丸御殿(名古屋市中区)

建て替え論議がある名古屋城天守閣(奥)と復元中の本丸御殿(名古屋市中区)

1612年に完成した天守閣は明治維新の廃城の危機を免れたが、1945年5月に米軍による名古屋空襲で焼失。59年に再建された際、「空襲で燃えたこともあって火災に強いコンクリート製になった」(名古屋城総合事務所)。

焼失前の精巧な実測図に基づいて造られた外観はほぼオリジナルと同じ。とはいえ、内部にエレベーターが設置されていることなどもあって、「ニセモノ」感を抱く人が多いようだ。現在、天守閣のそばに150億円をかけて木造の本丸御殿を復元中で、天守閣とセットで観光の目玉にしたいとの思惑もある。

今年2月、市の主催で開かれた市民討論会。出席した市民の意見は割れた。「世界遺産を目指せ」「金がかかりすぎ。今の天守閣を大切にすべきだ」。市の試算では、建て替えの総費用は342億円。木材の調達や、建築基準法や消防法をクリアできるかといった課題も横たわる。築城が今も昔も国を挙げての一大プロジェクトであることに変わりはない。

現在、江戸時代の天守閣が残るのは松本(長野県松本市)、犬山(愛知県犬山市)、彦根(滋賀県彦根市)、姫路(兵庫県姫路市)の国宝4城を含め12城。それ以外は第2次大戦後、高度経済成長期以降に建てられたコンクリート製が主流だ。老朽化や耐震性強化の動きを機に、各地で名古屋城のような建て替え議論が起きている。

北海道松前町の松前城。61年に再建したコンクリート製天守閣は昨年の耐震診断で「震度6以上で倒壊の恐れ」と指摘された。町民らが参加する審議会が、木造による復元の可能性を探る。今後、費用の試算などに入る予定だ。

行政だけでなく、地域住民からも「本物を」の声が上がる。神奈川県小田原市では、地元の有志が数年前から小田原城の木造化構想を温めている。4月に開いたシンポジウムには300人が集まった。10月に特定非営利活動法人(NPO法人)「みんなでお城をつくる会」の設立を申請、今後、計画を具体化する。市も前向きだ。

構想では、50億円程度と見込まれる建設費の4割を市民の寄付で賄う。可能な限り地元の木材を使い、職人の育成も狙う。「城は町のシンボル。自分たちの手で、自分たちの城を造る。そのことを通じ町に誇りを持てるようにしたい」。中心メンバーの一人で、地元の老舗鮮魚店の3代目、古川孝昭さん(59)は夢を膨らませる。

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