四万十川にハリセンボン 下流域に海水魚が増加
高知県を流れ「日本最後の清流」とも呼ばれる四万十川の下流域で、海水魚が増えている。川床が深くなり、海水の流入や温暖化が影響しているとみられ、関係者は「生態系のバランスが崩れかねない」と危機感を募らせている。

数十年間、魚の種類を調査している公益社団法人「トンボと自然を考える会」常務理事の杉村光俊さん(57)によると、四万十川水系で捕獲された魚は、約30年前は100種類前後だったが、現在は200種類以上。増加の半分は海水魚で、ハリセンボンやイシダイ、スジモヨウフグなどが確認されている。
理由として杉村さんは、かつて行われていた砂利採取で川床が深くなったことを指摘。河口から流れ込む海水の量が増えたとしている。国土交通省中村河川国道事務所によると、砂利採取は1982年、川床が深くなり過ぎて禁止された。
「上流に建設された砂防ダムが砂利をせき止め、浅く回復されない」と杉村さん。高知県によると、四万十川支流の砂防ダムの数は80年から増え続けている。
高知大の町田吉彦名誉教授(水生動物学)は、温暖化の影響を理由に挙げる。日本の太平洋側の伊豆半島より南では近年、台湾やフィリピンの沿岸で見られる魚が増加しており、実際、県水産試験場の調査では、秋から冬にかけての土佐湾の平均海面水温は、この35年間で約2度上昇した。
「従来の川の豊かさが失われかねない」と杉村さん。魚に詳しい東京海洋大客員准教授のさかなクンは「熱帯や亜熱帯の海水魚が毎年のようにやってきて増加しているとすれば、生態系のバランスが崩れることにもなりかねない。このような事例は日本各地の川で起こっている可能性がある」と心配そうに話した。〔共同〕