伊豆大島で営業再開の美容室、悩みの聞き役に

2014/5/1付
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 昨年10月、土石流災害に遭った伊豆大島(東京都大島町)の老舗美容室が営業を再開し、客足が戻りつつある。思わずこぼれる悩みや不安……。約60年にわたり店を切り盛りしてきた秋広みねさん(82)が聞き役になって人が集う。自身も被災後、なかなか寝付けず、睡眠薬を飲み始めたが「仕事をしていると元気が湧く」とほほ笑む。

 多くの住民が犠牲になった元町地区に、みねさんの「すみれ美容室」はある。島の高校を出て東京・亀有の美容学校で学んだ後、すぐに始めた、思い出が詰まった店だ。

 台風26号が襲った昨年10月16日、2階建て店舗兼住宅の1階の美容室にも大量の土砂が流れ込んだ。脚の悪い夫の日出夫さん(82)とそろって消防士に助けられた。

 都内に住む子供や孫が後片付けの手伝いに何度も来てくれた。被災直後は「今まで頑張ってきたのにどうして」と、みねさんは沈んだ表情を見せたこともあったが、昨年12月に店を開けた。

 最初の1カ月は「お客さんが困っているから」と無料でカットした。元町地区は壊れた家や商店が今も残っていて、人通りが大きく減った。それでも「頭の形や髪の癖を覚えてくれているから、ここが一番」となじみの一人。客とは茶飲み友達の間柄でもあり、店はおしゃべりが絶えない。

 一方で、39人が死亡・行方不明となり、建物被害も約400棟に上った災害は一人一人の暮らしや心に影を落とす。「娘が家を流されローンだけが残って」「少しずつ山がずり落ちているんじゃないかと不安で」。客が漏らす言葉に、みねさんは耳を傾ける。

 「亡くなったり避難したりで近所付き合いがめっきり減った。みんな人生が変わっちゃったけど、誰も責められない」。話す間もはさみを持つ手を休めない。体力の続く限り店に立つつもりだ。〔共同〕

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