日銀の成長強化策 効果は未知数
追加緩和の圧力かわす狙い?

2010/4/30付
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日銀が前例のない政策に足を踏み入れようとしている。日本経済の成長基盤を強化するため、民間金融機関の取り組みを資金面で支援するという。30日の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」発表後に記者会見した白川方明総裁は「できるだけ早く実行する」と意気込みを示した。だが、中央銀行の守備範囲内で効果ある対策を打ち出せるかは未知数。参院選を前に高まる追加的な金融緩和への圧力をかわすのが狙いとの見方も出ている。

成長基盤の強化策は、白川総裁が執行部に対して検討を指示した。今後、日銀が民間金融機関や産業界と具体策を協議。原案を政策決定会合で報告する予定だ。

白川総裁は「現下の日本経済の状況を踏まえると、成長基盤を強化することが必要で、日本銀行としても中央銀行の立場から、これに資する新たな取り組みをすることが必要との考えが共有された」と説明した。

日銀は1998年から99年にかけて、いわゆる貸し渋りを緩和するため臨時の貸出制度を設けたことがある。金融機関が融資を増やすことを前提に資金調達をしやすくする仕組みで、増やした融資の半分にあたる額は低利で調達できるよう工夫した。今回はこの制度が参考になるという。

当時と異なるのが、今回はあくまで成長分野に対象を限定する点。「研究開発、科学振興、環境などが念頭にある」(白川総裁)という。経済の生産性を高め、潜在成長力を引き上げるという問題意識から出発した対策だけに、本来なら淘汰されるはずの企業を延命させる内容となっては本末転倒というわけだ。

ただ、産業政策ともとれるこうした対策が日銀の仕事かとなると疑問も残る。この点に関連して白川総裁は「デフレは日本経済の根源的な問題が集約された現象」と強調した。つまり、デフレ克服には日本経済の生産性を向上させ、長い目で見た成長期待を高めることが不可欠で、その方策の1つとして今回の成長強化策を打ち出したとの理屈。それでもマクロ金融政策がおはこの日銀が異分野で実効性のある手段を打ち出せるかは疑問が残る。

むしろ市場関係者のあいだには「政府からの追加緩和圧力をかわす狙いでは」との声が上がる。白川総裁は、かねて市中の資金量を増やす「量的緩和」的な政策は、経済てこ入れやデフレ解消への効果が限られるとの立場をとってきた。一方で7月の参院選を前に政界や市場から追加緩和の圧力は増すばかり。目先を変えるために、対策の検討を打ち出したのではという見方だ。

実際、30日の会見でも、総裁は追加的な緩和策について「現時点では必要と考えていない」と強調。さらに新たな成長強化策についても「資金供給量を意識するものではない」と念を押した。

新たな展望リポートは、2012年度か、早ければ2011年度中にもデフレから脱却できる可能性をにじませた。総裁も「デフレ脱却に向けて着実に歩を進めている」と話す。新政策で時間稼ぎをしているうちに、経済の好転が明確になり、追加の金融緩和が不要になれば――。そう日銀が考えたとしても、おかしくはない。

ただ、経済にも政治にも先行きには不透明要因が多く、展望リポートも追加緩和の余地を残す内容。総裁は追加緩和の可能性について「予断をもって考えていない」と話した。含みのあるこの発言の行く末を市場関係者はかたずをのんで見守っている。(西村博之)

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