金融緩和策、追加の余地残す 日銀展望リポート

2010/4/30 16:53 (2010/4/30 16:39更新)
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日銀が年2回、景気や物価の現状認識や見通しを示す「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)は、金融政策の次の一手を占う材料になる。30日発表の同リポートは、日銀がこれまでマイナスと見込んでいた2011年度の物価見通しをプラスに引き上げたのが特徴だが、その水準は0.1%に過ぎず、必ずしもデフレ脱却に楽観的な見方を示したとはいえない。今後の追加策の余地をなお残したと言えるだろう。金融緩和の「出口」が近づいたとの市場の観測から金利が上昇するのを避けるための配慮もありそうだ。

展望リポートが示す経済・物価見通し
2010年度2011年度
実質GDP1.8(1.3)2.0(2.1)
消費者物価指数(生鮮食品を除く)-0.5(-0.5)0.1(-0.2)
国内企業物価指数1.3(-0.5)0.7(-0.4)

前年度比%、()内は1月時点の予想

景気の先行きについては、輸出を起点に企業部門が好転→しだいに家計部門に波及して成長率が高まる、との従来のシナリオを維持した。その上で、景気持ち直しのペースが、心持ち前倒しされる可能性をにじませた。

・「先行き2010年度から2011年度を展望しすると経済は回復傾向をたどるとみられる」

・「2010年度の成長率は潜在成長率を上回る水準となるとなると見込まれ、2011年度にはさらに高まる見通し」

これまで「2010年半ばごろまでは景気の持ち直しペースが緩やかなものとなる」としていた慎重な表現は姿を消した。中国など新興国向けの需要が予想以上に伸びているのが主な理由。景気の自律回復に不可欠となる賃金や消費の回復についても「改善がしだいに明確化してゆく」と予想した。

この結果、早くても2010年度後半からとみられていた自律回復の時期は、若干前倒しされる可能性がある。

一方、物価については、2011年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)が、前年度に比べて0.1%上昇すると予測。年度半ばにも前月比でプラス基調に入るとの前提とみられ、「2011年度中にはプラスの領域に入る可能性が展望できる」と記した。

日銀の政策委員らが理想的と考える物価上昇率を示した「中長期的な物価安定の理解」は、中心値が1%。水準がまだ低いだけに、「デフレ脱却」には至らないが、2012年度にはそう呼べる環境が整う予測といえる。

もっとも、今回の展望リポートは、多くのリスク要因を指摘したのも特徴だ。新興国の成長は経済への追い風である一方、この結果として生じる資源価格の上昇やバブルの崩壊などが、日本の経済に悪影響を及ぼす可能性を指摘。さらに大規模な財政支出で「公的債務残高が未曽有の水準まで達している」として長期金利の上昇リスクに警鐘を鳴らしたほか、国際的な金融規制の強化が実体経済に打撃を与える可能性などにも言及した。

そのうえで、金融政策の運営にあたっては「きわめて緩和的な金融環境を維持する」「中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく」との従来の立場を繰り返した。景気・物価情勢が改善する中では、金融緩和を維持するだけで政策効果が高まる、というのが日銀の立場。金融緩和の「出口」はまだまだ遠く、必要とあらば追加策をとる余地を残した内容といえる。(西村博之)

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