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「争族」心配…遺言信託に注目 10年で契約数倍増

遺言書の作成から保管、遺産の名義変更まで信託銀行が請け負う「遺言信託」が注目を集めている。死後の相続を気にする高齢者が増えているが、手続きは多岐にわたり、当事者だけでは対応できないことが多いためだ。遺産相続を巡るトラブルを回避する手段にもなる。遺言信託の活用法について現場を取材した。

相続増税を控え、高齢者らの関心は高まっている(三井住友信託が横浜で開いた税制改正セミナー)

「私の全財産を相続してほしい」。千葉県流山市に住む大村啓介さん(84、仮名)は10年前、元同僚の親友から突然打ち明けられた。大村さんはあまりの驚きに「いま何と言った」と聞き返したという。

親友は持病を患っていたが、一人暮らしで面倒をみてくれる親戚はいない。遺言書を残さずに他界すれば、預金や不動産など1億円に上る財産は疎遠な親戚のものになってしまう。何くれとなく世話を焼いてくれた大村さんに財産を託すため、親友はみずほ信託と遺言信託の契約を結んだ。

昨年2月に友人が他界した後、「不動産の名義変更から預金の移し替えまですべてを銀行がやってくれた」(大村さん)。サービスに感心した大村さん自身もみずほ信託と遺言信託の契約を結び、息子らに財産を託す準備を整えた。

「単に『家を相続する』では建物なのか土地なのか分からず、相続財産として認定されない可能性があります」。信託銀行の担当者が東京都世田谷区に住む川山好子さん(74、仮名)に遺言書の書き方を指導する。

川山さんが遺言信託の契約を結んだのは、友人から遺言の不備によって相続財産を受け取り損なった体験談を聞いたためだ。川山さんは「銀行の手助けがあれば安心」と話す。

遺言書の作成には半年程度かかることもあり、担当の行員は足しげく契約者の自宅に通う。さらに作成から死後の財産分与まで「平均で7~8年かかる」(大手信託)。その間、遺言書は信託銀行が厳重に保管し、遺産の内容や相続人の構成に変化がないか定期的に調査する。労力は非常に大きい。

その対価となる基本手数料は20万円から30万円程度。財産分与に必要な執行報酬は100万円以上かかる。

信託協会によると、2013年3月末の遺言信託の契約件数は約8万件で、この10年で2倍に増えた。遺言書は法的に大きな効力があり、一部の相続人が異議を唱えても原則として遺言が優先する。三菱UFJ信託銀行の灰谷健司執行役員は「相続財産を巡って親族が対立する『争族』の増加が背景にある」と指摘する。相続に関する家庭裁判所への相談件数は12年度に17万件を超えた。(小川和広)

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