日航、逆風下の再建始動 更生手続き3月終結めざす
計画に認可 課題なお多く
日本航空は30日、人員削減や路線縮小などを柱とした更生計画案を東京地裁が認可したと発表した。日航は同計画に沿ってリストラを進め黒字体質への転換を急ぐ。2011年3月までに主取引銀行から新規融資を受けて債務を一括返済し、更生手続きを終わらせる予定。12年末の株式再上場を目指すが、厳しさを増す航空業界の競争を生き抜くためにはなお多くの課題がある。
日航は12月1日付で管財人の企業再生支援機構から3500億円の出資を受け、支援機構の完全子会社となる。金融機関が約5200億円の債権を放棄する一方、日航はグループで1万6000人の人員削減など更生計画で掲げたリストラを徹底する。
日本政策投資銀行など主力5行とは来年3月までに2849億円の融資を受けることで基本合意した。日航は手元資金と合わせて3000億円強の債務を一括返済する方針。実現すれば更生計画は終結し、裁判所の管理を離れることになる。
ただ、30日の基本合意でも金利や担保など融資の条件は決まっておらず、銀行は日航の経営改善努力を見守る姿勢だ。
日航の収益体質がどこまで変わるかが焦点。4~9月の連結営業利益は1096億円と過去最高を記録し、10月単月も231億円と堅調だった。瀬戸英雄・企業再生支援委員長は同日の記者会見で「業績向上は目を見張るものがある」と強調した。
もっとも、手放しで喜べる状況ではない。業績改善は燃油代の低下や為替などのプラス要因があるためだ。4~9月の利用客数は国際線が前年同期比8.9%減、国内線が4.0%減で、路線撤退や減便の影響が顕著だ。
1座席を1キロ飛ばすのに必要な営業費用(自社運航便)は10年4~9月期で12.6円と、前年同期から11%低下した。機材の減損処理などで15.6円とほぼ横ばいだった全日本空輸よりやや優位に立った格好だが、アジア大手のシンガポール航空は8円前後。海外勢と比較すると安いとはいえない。
航空自由化の進展や格安航空会社の普及で、競争は激しさを増す。インフルエンザの大流行やテロなどが起きて旅客需要が落ち込めば、赤字転落は避けられない。日航はこうした不測の事態に備えるため、500億円規模の増資を検討している。稲盛会長は30日、出身母体の京セラが増資の一部を引き受ける考えを表明したが、主取引銀行は難色を示しており実現は不透明だ。
日航はパイロットと客室乗務員を対象に、雇用契約を強制的に解消する整理解雇を12月中にも行うことを決めている。これに対し、客室乗務員でつくる労組は12月下旬にストを実施することを決めた。労使間の対立が深まることも懸念材料だ。
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