長すぎる火力発電所の「助走」 環境規制も議論の俎上に
編集委員 西條都夫

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2012/8/6 7:00
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来年4月からはアセスの工程に今はない「配慮書の提出」という項目が付加され、手続きにかかる期間が今より6カ月以上延びる見込みだ。

加えて今の制度では環境アセスと並行して、建設を進めることは認められておらず、アセスが完了して初めて建設がスタートする。場合によって、アセス完了以前には旧設備の廃棄さえできないこともある。同時並行で作業を進めるコンカレント方式が封じ込まれた結果、「リードタイムが10年」という事態が当たり前になっている。

竹原火力発電所新1号機の主な日程・計画
環境アセスメント 方法書届出2010年12月
経産大臣勧告11年6月
環境調査11年7月~
準備書届出13年6月予定
アセス完了14年春予定
着 工14年予定
運転開始20年予定

これについて、事業者はどう考えているのか。Jパワーの菅野等設備企画部長は「環境アセスは地域社会の理解を得るうえで大切な手続き」と前置きしたうえで、「予見可能性をできるかぎり高めてほしい」という。

その場合、最も問題になるのはCO2の排出規制に関する予見性だ。三菱商事系のダイヤモンドパワーなどが福島県いわき市に石炭火力発電所の新設を計画したが、2010年9月に断念に追い込まれたことがある。このときは環境アセスの過程で環境相から「最高水準の技術を用いて、CO2の排出を最大限抑制せよ」と注文がつき、それが断念の契機になった。クリアーすべき水準を数値であらかじめ示しておけば、事業者が相当の手間をかけて事業計画を立案し、アセス調査をして、その末に断念という時間のムダは防げただろう。

もう一つは「設備リプレース(更新)で、明らかに以前の設備より環境性能が向上する場合は手続きを簡素化すべき」と菅野部長は指摘する。環境省もその方向に踏み出しつつあるが、「さらに徹底してほしい」という。

懸念すべきは、長すぎるリードタイムは実質的に参入障壁として機能することだ。既存の電力会社はそれでも10年を前提に設備更新計画をたてることができるが、新規参入会社にとっては、投資してから売り上げが計上できるまで10年かかるわけで、あまりにリスクが大きい。普通の民間企業の感覚では、とても間尺に合うビジネスではない。

あるいはアセスの網をくぐるために、アセスの対象から外れる低出力の小型発電設備をたくさん作るような動きが出てくれば、むしろ環境への負荷が増大するし、すでにその兆しはある。新たなエネルギー政策づくりにあたって、環境規制を聖域化せず、そのあり方を正面から議論すべき時期に来ている。

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