長すぎる火力発電所の「助走」 環境規制も議論の俎上に
編集委員 西條都夫

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2012/8/6 7:00
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3.11以前と以降で電力をめぐる社会の意識は様変わりした。電力大手の地域寡占に批判が強まり、経済産業省の電力システム改革専門委員会は発送電分離や電力小売りの全面自由化など、震災前ならおそらく電力会社の反対で日の目を見なかったような大胆な施策を次々に打ち出している。

だが、システムをいじるだけで電力の競争が進むわけではない。実質的な競争の進展を担保するには多方面からの改革が必要だ。今回はその筆頭格ともいえる環境規制について考えてみたい。

竹原火力発電所は新1号機を計画している

竹原火力発電所は新1号機を計画している

普通の商品なら供給不足をきたすと、それを好機とみて新規の投資が起こり、供給力が増大し、需給ギャップは解消する。電力という「商品」も原理的には同じはずだが、原発の不稼働で深刻な供給不安が今も続く中でも、供給を増やす動きは不活発。唯一の例外は固定価格買い取り制の始まった再生可能エネルギーだが、ベース電源として原子力発電所を肩代わりできる実力の持ち主である大型の石炭火力発電所やガス火力発電所については投資の動きがまだ本格化はしていない。

一つの理由は、発電所をつくるための環境アセスメントの規制が厳しく、計画立案から実際の発電所の稼働まで一声10年といわれる超長期のリードタイム(準備期間)が必要なことだ。

自動車工場の新設を今計画しても、実際に工場が稼働し、商品が出てくるのが10年後ということになれば、市場がどう変わっているか予想もつかず、投資に尻込みするだろう。それとよく似た事態が、電力投資では現実に起こっているのだ。

例えば、Jパワーが計画する竹原火力発電所(広島県竹原市)の新1号機(60万キロワットの石炭火力)は環境アセス手続きが2010年12月に始まり、今後計画通りに進んだとして運転開始は2020年になる予定だ。

なぜこれほどの時間が必要なのか。発電所アセスの調査項目が大気汚染の広がりや二酸化炭素(CO2)の排出、生態系への影響など広範囲に及び、季節や気温によって影響も異なるから最低12カ月を調査に要する。さらに調査結果を公表し、意見やコメントをヒアリングする期間も必要。Jパワーの想定ではもろもろの手続きが終わり、着工にゴーサインが出る(すなわちアセス手続きが終わる)までに42カ月を見込んでいる。

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