/

「テレビ局化」するユーチューブ

チャンネルを作り広告も強化

世界最大の動画配信サービス「ユーチューブ」が、スマートフォン(スマホ)時代のテレビ局になろうとしている。運営企業のグーグルは、テレビに模した画面へとユーチューブを刷新。在京キー局とも提携し、独自コンテンツの配信を始めた。視聴実績に連動する広告商品も拡販中だ。ネット接続が前提の「スマートテレビ」普及も見据え、ユーチューブの強化を急ぐ。

ユーチューブは「チャンネル」単位にデザインを変えた(写真はJリーグチャンネル)

「ユーチューブのテレビ局化」に向けたグーグルの策は3つある。第一は「チャンネル」単位での動画の再編だ。

12月にパソコン向けサイトのデザインを刷新し、「スポーツ」「動物」など種類に応じた従来の区分から、特定の芸能人や趣味といったテーマに沿った動画を流し続ける「チャンネル」へと改めた。スマートフォン(スマホ)向けサイトも、同時にチャンネル方式へと衣替えした。

「従来の動画の区分では、増え続ける動画を効果的に探すのが困難になった。利用者の興味に沿って、動画をキュレーション(収集・選別)する手段がチャンネルだ」。グーグル日本法人でユーチューブ事業を担当する水野有平執行役員は、こう説明する。同社によれば12年のユーチューブの利用実績は過去最高を記録。1秒に72時間の動画が投稿され、毎月8億人が計40億時間の動画を再生したという。

スマートフォン版のユーチューブサイトもチャンネル単位に刷新した

動画の区分をチャンネル方式に変えたことで、ユーチューブはあたかも数百種類の専門番組が並んだケーブルテレビのようになった。利用者はお気に入りのチャンネルを登録しておけば、ユーチューブのサイトを訪れるたびに最新の動画をすぐに視聴できる。

テレビ局化に向けた第二の策は、独自動画を充実させることだ。TBSテレビ、テレビ朝日、フジテレビジョン、ニフティ、ホリプロなど13社は、昨年末からユーチューブで独自動画の配信を始めた。

各社が専用チャンネルを開設。放送中のテレビ番組に連動したネット独自番組やテレビ番組を補完する番組、新作のアニメ、鉄道や自動車、ファッションといった趣味の番組などを配信する。「ネットを中心に動画を見ている若者などに、放送と同じ品質のネット番組を届ける。決しておまけではない」(テレビ朝日)。

グーグルは独自動画の製作を後押しする体制作りにも取り組んでいる。その1つが「クリエイターズガイドブック」と呼ぶ、動画作りのノウハウ集を提供すること。「最初の5秒で視聴者をつかむ」「動画の縮小画像を厳選する」「総選挙など著名なイベントになぞらえたタイトルを付ける」といったものだ。

 「当社はコンテンツ作りそのもののノウハウはないが、どんな動画がよく見られているかの傾向は分かる。見られる動画を作るコツを、ノウハウとしてまとめた」(水野執行役員)

「ユーチューブは企業のブランド構築に有効」と話すワトソン副社長

そして第三の策が広告の強化だ。利用者が視聴した広告についてだけ広告主に課金する「成果報酬型」の広告商品を拡販中だ。「世界の主要な広告主企業の上位100社中、90社が導入している。この1年で倍増した」(米グーグルのルーカス・ワトソン副社長)。

ワトソン副社長によると、「企業はブランド価値確立の場としてユーチューブを活用し始めた」。例えば江崎グリコは、妻夫木聡と松嶋菜々子を起用し、1本60秒で3部作から成るドラマ仕立てのCM動画をユーチューブ用に制作した。「テレビでは流しにくいCMでも、ユーチューブならば流せる」。

広告主企業にとっての魅力は、広告効果の高さだ。成果報酬型の広告の場合、視聴者は閲覧するか飛ばすかを選ぶことができる。利用者が閲覧した広告の種類や閲覧時間、閲覧回数など、既存のテレビ広告では得るのが難しい情報も得られる。広告を充実させることで、独自動画も充実する。それが利用者を呼び、さらに広告媒体としての価値が高まるという好循環を作り出そうとしているわけだ。

ユーチューブ強化の延長線上にあるのは「スマートテレビ戦略」だ。

スマートテレビとは、インターネットに接続して利用することを前提にした多機能テレビのこと。既存のテレビ放送のほか、一般のウェブサイトを閲覧したり、映画やドラマを好きな時間に視聴できるビデオ・オンデマンド・サービスや交流サイト(SNS)を利用したりできる。

グーグルはスマートテレビ用基本ソフト「グーグルTV」も開発中だ

グーグルは昨年11月、スマートテレビ向け基盤ソフト「グーグルTV」の最新版を公開した。スマホ用OSのアンドロイドを基に開発したもので、既存のテレビ番組の視聴やウェブサイト閲覧が可能。もちろん、ユーチューブの動画も視聴できる。

グーグルがユーチューブのテレビ局化を急ぐのは、パソコンやスマホに加えてテレビでもユーチューブを違和感なく視聴できるようにするのが狙い。大きさや使い勝手の異なる複数の画面(マルチスクリーン)の間で使用感を統一するのは、グーグルの基本方針だ。

とは言え、グーグルは既存のテレビをネット動画で置き換えることだけを目指しているわけではない。目指すのは利用者ごとに最適化した番組やネットコンテンツ、ネット広告を配信できるようにすること。そのために同社のサービスをフル活用する。

利用者が最後に見た動画、ネット検索の結果、SNSを通じての友人からのお薦め動画…。スマホやSNSとの連携機能を基に、利用者のプロフィルを構築して最適な情報を最適なタイミングで提供する。スマホ・ソーシャル時代のテレビ局こそが、グーグルの目指す究極の姿と言える。

(産業部 玉置亮太)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン