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液状化、転じてスマートシティへ 浦安市、再生へ動く

都心に近い新興住宅地として人気だった千葉県浦安市。東日本大震災による液状化被害で、一転して住宅購入を敬遠する動きが広がった。市内に開発用地を抱える住宅メーカーや不動産関連会社などにとってイメージ回復は大きな課題。液状化対策の徹底だけでなく、自然にも調和したスマートシティ(環境配慮型都市)として再生を目指す挑戦が始まった。

「災害に強く、環境に優しいスマートシティの実現に向け、うまく産官学が連携できている」。浦安市の松崎秀樹市長は手応えを感じている。

太陽光をはじめとした再生可能エネルギーやエネルギー管理システム(EMS)、省エネ機器などを積極導入するスマートシティは日本でも横浜市や北九州市、愛知県豊田市などで実証試験が進んでいる。だが、まだ日本ではスマートシティは補助金頼みで省エネの実験などを目的としたプロジェクトがほとんどだ。

浦安市では2011年11月、「官」である同市に加え、住宅メーカーのトヨタホームやパナホーム、スターツグループなどの「産」、明海大学などの「学」で構成するコンソーシアムが発足。各社が太陽光パネルやEMSなどを導入し、液状化対策も徹底した住宅を建設していくという「現実のビジネス」が始動した。

即座に連携が進んだのは危機感の裏返しでもある。浦安市は都心に近く、駅から平たんな埋め立て地が続くだけに、特に住宅開発は大きなビジネスとなる。住宅各社が同地域で今後3~5年間に建設する住宅は合計1000戸規模になるとみられる。1戸当たり5000万円で販売しても500億円市場だ。

コンソーシアムではエネルギーやIT(情報技術)について検討する「スマートシステム分科会」や、災害や液状化対策をテーマとした「先進防災分科会」など4つの分科会がスタート。さらに専門的なテーマのワーキンググループも次々に立ち上がり、液状化対策の専門家などを招き、毎週のように活発に議論を重ねている。

 スマートシティの実現には各家庭と地域のシステムをつなぐエネルギーやITのプラットフォームも必要。富士通と三井物産は12年12月に共同出資会社、フューチャーシティソリューションズ(東京・港、村田良一社長)を設立。富士通が開発するクラウド型のエネルギー管理サービスを家庭内エネルギー管理システム(HEMS)を通じて提供する計画だ。浦安市など各地のスマートシティ計画へのサービス提供を視野に入れ、準備を急いでいる。

富士通は省エネ機器やエネルギー管理システムの開発・販売に力を入れている(2012年12月開催のエコプロダクツ2012での展示風景)

浦安市の取り組みが注目されるのは地元の課題に目を向けるだけでなく、海外の最先端のノウハウを導入しようとしていることだ。三井物産の提携先の英エンジニアリング大手、アラップは12年12月に浦安市側に中間報告を提出した。

アラップは欧州やアジアのスマートシティの計画策定などで豊富な経験を持ち、具体例に基づくアドバイスには定評がある。正式報告の取りまとめ作業も進めており「グローバルな視点は参考になる。(良いアイデアは)採り入れていきたい」(松崎市長)と期待が大きい。

新興住宅地として若い家族連れなどが移り住んだ浦安市は今後、急速に高齢化が進む見通し。「人口構成からみて浦安市は今後の日本の縮図」(松崎市長)とみる。

過疎地など各地の地方部では足腰が弱った高齢者などに配慮し、中心部に都市機能や住宅、店舗などを集中させて暮らしやすくした「コンパクトシティ」を目指す動きが広がっている。たった16平方キロメートルに16万人が住む浦安市はコンパクトシティそのものでもある。

震災や液状化、高齢化など次々に訪れる課題をスマートに解決できるのか。浦安市の取り組みはスマートシティ構想が相次ぐ東北の被災地など他地域からも注目されている。

(産業部 銀木晃)

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