/

給料はサイコロ振って

柳沢大輔・カヤック社長

前回はカヤックで手がける事業のエグジット(経営戦略)のひとつに、自分たちのつくったサイトの売却があることを書いた。事業売却ではある程度まとまった資金を獲得できる。ベンチャー企業にとっては大きな額になるので、その使い道には会社の方針が明確に表れる。ある売却で僕たちは現在の鎌倉本社の内装費に投資をした。今から約5年前のことだ。

世界的にも著名な建築家をパートナーに迎え、鎌倉本社だけに和をほうふつとさせるオフィスとなるよう、腰の高さの巨大テーブルに畳を敷き詰めその周りを縁側風に木の板でぐるりと囲み、その縁側を机にするという奇抜でインパクトのあるデザインにした。

これはかなりチャレンジングな投資だった。引っ越しから半年間、資金繰りが厳しい状況となったことは今でもしっかりと記憶している。そのときは、引っ越しの2年ほど前に入社していた財務担当者(僕が大学時代に塾講師のアルバイトをしていた時の教え子)がしっかりと資金繰りのシミュレーションをしてくれたおかげでなんとか乗り切った。

そしてチャレンジした甲斐もあり、多くの媒体でオフィスを取り上げていただき、結果として仕事の依頼や採用へとつながり知名度が向上した。

会社とは、投資をするとリターンを得られる。そのメカニズムをこうした経験を通して体で理解してきた。それは時に事業であり、オフィスであるが、最大の投資は人だと考える。これまでも一見、投資対効果が測りにくいものにも積極的に投資をしてきた。

これは、法人をひとりの人格を持った人ととらえてカヤックのキャッチコピーを面白法人と名付けたところが出発点となっており、会社そのものがコンテンツになると考えているからだ。

 ゆえに、サイコロを振って給料を決めるという報酬制度をもうけたり、海外に臨時のオフィスを借りて、社員みんなでそこに移動して仕事をする「旅する支社」というユニークなワークスタイルを取り入れたり、見たこともないようなオフィスを作ったりすることも価値を生む。

「会社もコンテンツの1つ」であることをいちばん発信しやすい企業活動は、採用だ。これまでに実施してきたものを紹介するなら、中途採用で実施した、正月の三が日に採用エントリーしてくれた方と寿司屋で面接をするという寿司面接。新卒採用で実施したもので、会社への志望動機は他社面接時に使った履歴書の使い回しで、OKというお手軽エントリーの仕組み。

また新卒説明会も、2010年の代々木体育館で開催したウルトラクイズ形式の説明会、そして11年には逆にリアルな場所を借りず、オンラインだけで開催した会社説明会(グローバルな人材を募集しようと5か国語同時中継)。12年は「旅する会社説明会」としてオリジナルのデザインでラッピングをした観光バスに弊社の人事部が乗り込み、九州から北海道まで全国行脚してバスの中で説明会を行うなど毎年趣向を凝らしている。

このようなことを継続していった結果、次はどんなことをするのか楽しみになってもらえるような会社になるのが理想だ。そうすると会社そのものが見ていて何か面白くなり、会社って面白くていいんだと思うようになる。そうなるよう僕たちは努力してきたし、それが価値を生み出してきた結果、最近、面白い会社というカテゴリーが世の中に徐々に生まれてきたように感じている。

[日経産業新聞2012年8月29日付]

 この連載は変革期を迎えたデジタル社会の今を知るためのキーパーソンによる寄稿です。ツイッター日本法人代表の近藤正晃ジェームス氏、東芝・研究開発センター所長の斉藤史郎氏、カヤック社長の柳沢大輔氏、トヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏、ネットイヤーグループ社長の石黒不二代氏らが持ち回りで執筆します。
(週1回程度で随時掲載)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン