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CO2を3割削減へ 夢の水素還元製鉄法、開発が第一段階クリア

製鉄に伴って発生する二酸化炭素(CO2)の3割削減を目指して日本が官民挙げて取り組む製鉄技術「COURSE50(コース50)」の開発が、第1段階を終えた。日本鉄鋼連盟(会長・友野宏新日鉄住金社長)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて2008年度から5年間の期間で進めていた要素技術開発で、一定の成果を確認。来年度から実験高炉建設など、より高度な開発に進むメドがついた。

「シミュレーションなどとほぼ一致した結果が出た。安堵した」。COURSE50の企画・運営会議プロジェクトリーダーを務める新日鉄住金の斎藤公児製銑技術部長は語る。中核技術である水素を使った還元が、今年、スウェーデンの試験高炉で成功したからだ。

通常、鉄鉱石に含まれる酸化した鉄から酸素を奪う「還元」には、石炭を蒸し焼きにしたコークスを用いる。鉄の生産量に比例して、奪い取る酸素の量が決まり、自動的に製鉄時に発生するCO2の量も決まる。

日本の産業界が排出するCO2のうち約45%が鉄鋼業とされ、鉄鋼業界は温暖化ガス削減を求められている。コークスで還元する限り、削減には限界がある。このためコークスに水素を加えて併用しようというのがプロジェクトの柱だ。水素還元の結果発生するのは、水だ。

「安堵した」のには訳がある。炭素を水素に置き換えるという一見単純そうな技術だが、懸念材料も多かった。

1つは高炉内に水素をふき込むことで、鉄鉱石が細かい粉に砕ける可能性があった。粉になると高炉内で水素や熱風が流れにくくなり、反応が進まない。また水素を使った還元は「吸熱反応」で、反応が進むと高炉内の温度が下がるのも克服すべき課題とされる。

スウェーデンでの実験では鉄鉱石の極端な粉化は確認されず、高炉内の還元反応も順調だった。プロジェクトチームでは水素をふき込むことで、おおむね5%のCO2削減ができたと見ている。これを10%にしようというのが、目標だ。

理論的な正しさが確認されたことで、プロジェクトは日本国内での実験高炉を建てる段階に移る。スウェーデンの試験炉の内容積は8立方メートル。10~15立方メートルのミニ高炉を、国内の製鉄所内に建設する構想だ。

 13年度から5年間かけて、水素をふき込む位置や量などのノウハウを蓄積していく。スウェーデンでの実験が1カ月足らずだったのに対し、常設の設備が国内にできる意義は大きい。

プロジェクトの一貫としてコークス炉に取り付けられたガス改質プラント(新日鉄住金の君津製鉄所)

日本の製鉄各社が実際に使っている高炉の容量は大きいもので5000立方メートル規模。10~15立方メートル規模での実験を終えた後には、100立方メートル規模の小型高炉を建設する方針だ。海外では中小鉄鋼メーカーが商業生産にも用いている規模で、実操業に近い環境になる。

COURSE50は水素還元のほかにも、その水素を確保するために、コークス炉で発生するガスの水素濃度を高める技術、高炉から最終的に発生したCO2を吸着する技術などの組み合わせだ。12年度には、コークス炉ガスの改質技術でも、新日鉄住金君津製鉄所(千葉県君津市)に実際のプラントを設置して、技術開発を進めた。

鉄連では一連の技術の実用化目標を30年と定めている。気が長い話のようだが、製鉄技術の進化は競争環境を一変させる可能性もある。1960~70年代に日本の鉄鋼業が欧米勢を凌駕(りょうが)したのは、生産性が高い連続鋳造と呼ばれる技術を一気に普及させたことが大きい。水素還元は韓国も国を挙げたプロジェクトを進めており、日本勢としても気が抜けない状況が続く。

(産業部 檀上誠)

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