2019年7月19日(金)

復活したスマホの老舗~PHS事業者ウィルコムの軌跡
編集委員 関口和一

(3/3ページ)
2012/7/26 7:00
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では、スマートフォンで先行したはずのウィルコムの端末は、なぜ普及しなかったのか。

ひとつの大きな要因は、3Gの高速データ通信が可能になった携帯電話が「フルブラウザー」と呼ばれるインターネットのウェブ閲覧機能を搭載し始めたことだ。ウィルコムの端末はマイクロソフトの「ワード」や「エクセル」のファイルが読めるのが売り物だったが、通信速度の絶対的な格差を埋めるまでには至らなかった。

ふたつめの転機は08年のソフトバンクによる「iPhone(アイフォーン)」の発売である。アイフォーンは海外ではその前年に第2世代携帯電話規格の「GSM」向けに登場し、人気を集めていた。キーボードでなく、指でなぞって操作するタッチパネル入力方式と、様々なソフトをネットから自由に取り込める機能が消費者の心をとらえた。

この2つめの転機はもちろん、ウィルコムだけでなく、国内市場で独特な進化を遂げていた「ガラパゴスケータイ」の殻をも打ち破ることになった。

こう振り返ると、ウィルコムだけでなく、日本の電機メーカーはスマートフォンの登場当初から世界の携帯技術を担ってきた。アップルの「ニュートン」に対抗し、電気専門店チェーンの「ラジオシャック」を展開する米タンディが93年に発売したPDA「ズーマー」も開発はカシオ計算機が担った。

それから20年近くを経た今、単独で携帯端末事業を手掛けているのは、シャープとパナソニック、ソニー、それに京セラくらいである。三菱や東芝、カシオはいずれも事業から撤退した。そのシャープやパナソニック、ソニーも現在はテレビ事業の不振から経営体制の見直しの渦中にあり、新しいスマートフォンの開発まで十分手が回らない状況にある。

しかし、日本が礎を築いてきたスマートフォン市場はぜひとも死守したいところである。その意味でウィルコムや京セラによるハイブリッド・スマートフォンの発売は重要な布石ともいえる。変化の激しい情報通信分野でアップルやグーグルの支配力がずっと続く保証はどこにもない。新しいウェブの記述言語「HTML5」が注目されているように、技術の転換点はこれからも常に起こりうる。その間隙に備え、日本勢にも今から技術の国際標準化やコンテンツの新しい配信プラットフォーム作りに取り組んでほしいものである。

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