2019年7月19日(金)

復活したスマホの老舗~PHS事業者ウィルコムの軌跡
編集委員 関口和一

(2/3ページ)
2012/7/26 7:00
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実際に持ち歩いた感想でいえば、スマートフォンでPHSのクリアな音質で通話できるのは新鮮だ。PHSの場合、山間部などに行くと電波が入るかどうか常に気になっていたが、そうした心配からも解放される。アドレス帳やカレンダーなどの情報を端末間で同期する必要がなくなるのもメリットだ。

逆にデメリットといえば、当然のことだが、スマートフォンを手帳代わりにしてPHSで通話することはできなくなる。通信機能が2つあることでバッテリーの消耗が速いという印象はなかったが、持ち時間は気になるところだろう。

通常のスマートフォンに比べ、特段不便だという点は見あたらず、通話料金を気にせず使えるスマートフォンというのは、その通りだといえる。

京セラが開発した通話機能付きのPDA「データスコープ」

京セラが開発した通話機能付きのPDA「データスコープ」

経営が悪化してから、ウィルコムは得意の通話専用端末に注力し、スマートフォン戦争の前線から離脱していたが、実は日本で最初にスマートフォンを発売したのは、ほかならぬウィルコムだった。3G技術の登場で携帯電話のデータ通信速度が劇的に速くなったが、それ以前は「PIAFS(ピアフ)」と呼ばれるPHSのデータ通信の方が速かった。それを生かして16年前の1996年に「データスコープ」という携帯端末を発売したのがウィルコムの前身、DDIポケットである。

スマートフォンといえば、今や米アップルやグーグルが市場をリードするが、通話機能がついた世界初のタッチパネル式スマートフォン「Simon(サイモン)」を94年に米国で発売したのは米IBMだった。前年にアップルが「ニュートン」を発売したことで、住所録や予定表などの電子手帳として使える「携帯情報端末(PDA)」がブームとなったのを受け、それに通話機能を搭載したものである。開発は三菱電機も担い、当時の地域電話会社だったベルサウスが通信網を提供した。

東芝が開発した「GENIO(ジェニオ)」

東芝が開発した「GENIO(ジェニオ)」

データスコープを開発したのは、今回、ハイブリッド・スマートフォンを開発した京セラだが、翌年97年には東芝が「GENIO(ジェニオ)」、松下電器産業(現パナソニック)が「ピノキオ」と名付けた携帯端末をそれぞれDDIポケットから発売、国内スマートフォン市場の先駆けとなった。だが残念ながら、99年に登場したNTTドコモの「i-Mode」により、携帯端末の主役にはなれなかった。

シャープが開発した「W-ZERO3」

シャープが開発した「W-ZERO3」

しかし、DDIポケットは2005年に社名を「ウィルコム」と改め、果敢にも新たなスマートフォンを発売する。「ウィンドウズモバイル」を採用した世界初の本格的なスマートフォン「W-ZERO3」である。

開発はPDAの「ニュートン」や「ザウルス」で技術力を培ったシャープが担当。マイクロソフトもスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が発売のタイミングに合わせて来日するという力の入れようだった。

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