拙速な自己改造戦略があだに あるネット起業家の教訓

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2011/10/27 7:00
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世界のインターネット人口は20億人を超え、日々増殖を続けている。IT(情報技術)企業の経営者なら、その波に乗り遅れず、収益を極大化する事業構造づくりをめざすのは当然だ。ただし、その方法と速度の決断は難しく、一筋縄ではいかない。

郵便を使ったDVDレンタル大手の米ネットフリックス。1997年の創業でシリコンバレーに本拠を置く新興企業だ。同社を巡る「混乱」の経緯をざっとおさらいすると次のようになる。

もともとDVDレンタルが主力だったが、ネット時代の到来を見据えて、その後、映画コンテンツのネット配信を始めた。当初はDVDレンタル会員への「おまけ」という色彩が強かった。月額9.99ドルを払えば、どちらのサービスも使い放題としていた。

料金体系を見直し、2つのサービスをそれぞれ月額7.99ドルにすると表明したのは今年7月。両方のサービスを使い続けるには16ドル近い料金を払う必要があり、実質的な値上げだった。これを第1ステップとして同社は9月、DVDレンタル事業を切り離して「クイックスター」の名称で運営し、ネット配信に事業の軸足を移す方針を打ち出した。

ところが会員は料金が上昇し、利便性は低下すると猛反発。顧客離れが進み、9月まで3カ月間の株価下落率はおよそ5割に及んだ。結局、迷走の末、10月10日、DVDレンタルとネット配信サービスの分離を取りやめると発表した。

「迅速に動くことと拙速は別物。今回の件でわれわれは後者になってしまった」。創業者のリード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は反省する声明を出した。

経営トップの力量不足が背景といった単純な話ではない。ヘイスティングス氏の手腕への評価は高く、マイクロソフト、フェイスブックの取締役もつとめている。ネット時代に対応できる姿への変革に取り組む世界最大のソフト会社と、斬新なサービスで急成長する世界最大のSNS(交流サイト)会社。そんな2社の経営に目を光らせてきた。

むしろ災いしたとすれば、ネットの世界の激動を間近に見て、自己改造の戦略が前のめりになりすぎたことかもしれない。

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