販売低迷のEV、陣営拡大へ迫られる戦略転換

(2/2ページ)
2012/10/29 7:00
保存
共有
印刷
その他

三菱自は「EVは価格が高い」という指摘に対応、廉価版のアイ・ミーブを発売したが「目立って販売が上向いているということはない」(三菱自動車幹部)と肩を落とす。

さらにここにきて日産・三菱自の「EV先行組」には逆風が吹く。トヨタがこのほど小型EVを開発、年内に販売することを表明したが、その台数は年間100台。しかも、リース限定の販売。「2年前にはEVは年間数千台の販売を期待していたが、現状ではなかなか難しい」(内山田竹志・トヨタ副会長)と、当初計画から大きく縮小した。

「チャデモ」準拠の急速充電器は海外でも設置実績を上げているが・・・(米オレゴン州)

「チャデモ」準拠の急速充電器は海外でも設置実績を上げているが・・・(米オレゴン州)

「ライバルもEVをどんどん販売してもらうことで市場が拡大する」(日産幹部)と期待を寄せていただけに、トヨタの計画にEV先行組の落胆は大きい。ホンダもトヨタと同様、「EVは近距離用コミューター」と位置付けており、環境対応車の主力にEVを据える日産・三菱自とは一線を画し、ハイブリッド車(HV)の拡充に力を入れている。

急速充電器を巡る規格も米国の自動車関連の規格標準化団体である米自動車技術者協会(SAE)が日本が世界標準を提唱する「チャデモ」方式と異なる規格である「コンボ」方式を採用することを表明した。グローバルでEVの普及を狙う日産などにとっても大きなマイナス要因だ。

エンジンを小型化して、その分不足する出力には過給器(ターボ)で補う「ダウンサイジング」やディーゼル車の燃費向上など、独フォルクスワーゲン(VW)など欧州勢を中心に従来型のエンジンの改良で対抗する勢力もある。既存設備を使えるため、複雑な機構を採用するHVや高価なバッテリーを使うEVより低いコストで生産できるメリットがある。

「バッテリーなど化学の世界は、自動車業界が慣れ親しんできた機械工学の世界と違って、研究の結果、一晩でがらりとその性能が変わることもある」と三菱自の益子修社長はEVの技術進歩に期待を寄せる。同社はEVの開発強化を目指し、今年も電気工学系の技術者の中途採用を増やす。

日本が一歩先行しているとされるEVはこのまま退潮してしまうのか。盛り返すには技術をかたくなに抱え込むより、エネルギー問題が今後深刻化する中国など新興国への技術供与や提携を通じて「味方」を多く取り込み、陣営の拡大で普及を図っていく――そんな戦略の転換が迫られている。

(産業部 藤本秀文)

  • 前へ
  • 1
  • 2
保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]