「小林一三モデル」は死なず
産業部編集委員 安西巧

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2010/10/26 7:00
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東が「東京スカイツリー」(東京・墨田)なら、西は「阿部野橋ターミナルビル」(大阪市)――。活気に乏しい日本経済にとってバブル期を髣髴(ほうふつ)とさせる大規模プロジェクトは貴重な起爆剤。事業主体は東武鉄道、近畿日本鉄道といずれも大手私鉄である。1990~2000年代を通じて膨張した不良資産の処理に追われ、沿線の不動産開発で利用客拡大を狙った「小林一三(阪急電鉄創業者)型のビジネスモデル」は幕を下ろしたともいわれていた。だが、少子高齢化に対応した私鉄の次世代戦略の切り札はやはり沿線開発。ただ、バランスシート調整で傷んだ各社の財務はかつてのように盤石ではない。

東京スカイツリー(6日午前、東京都墨田区)

東京スカイツリー(6日午前、東京都墨田区)

建造中の今年3月、333メートルの「東京タワー」(東京・港)を抜き、完成を待たずに構造物として高さ日本一になった新電波塔、東京スカイツリー。2011年春には東京、埼玉一帯の旧称「武蔵(むさし)」にちなんだ高さ634メートルにまで伸び、12年春の開業時までには350メートル地点と450メートル地点にこれまた「日本一高い」が売り物の展望台が設置される。施工は大林組。2008年の着工以来みるみる塔は高さを増し、早くも新たな東京のランドマークとして注目度は抜群で、東武鉄道、大林組にとってともに企業イメージ向上に結びついている。

1958年に竹中工務店の施工で完成した東京タワーも、着工から1年4カ月のスピード工事が話題を呼んだ。この種の注目プロジェクトは工事そのものが集客効果を期待できる。東京スカイツリーの見学者は目白押しで、東武鉄道では2010年第1四半期(4~6月)に建設地最寄り駅の押上や業平橋の乗降客が1日平均約2000人増加。10月20日に発表した4~9月期の連結経常利益は前年同期比22%増の129億円と従来予想(100億円)を大きく上回った。上方修正は2度目でいずれも"スカイツリー効果"が押し上げ要因だ。

話題性では東京スカイツリーにかなわないが、近鉄の阿部野橋ターミナルビルもプロジェクトの規模では引けを取らない。中心となる「タワー館」は地下5階地上60階建て、高さは当初290メートル弱の予定だったが、航空法の規制緩和を受けて300メートルにかさ上げ。これで「横浜ランドマークタワー」(横浜市)の296メートルを抜き、2014年の開業時には「日本一高いビル」になる。

高さだけではない。タワー館の地下2階~地上14階に入居する近鉄百貨店阿倍野本店は売り場面積が約10万平方メートルになり、松坂屋名古屋店(約8万7000平方メートル)を抜いて単独店として国内最大の売り場を持つ百貨店になる。この「2つの日本一」へのこだわりが、「近鉄グループの社運を賭けた」といわれる大規模プロジェクトへの意気込みをひときわ感じさせる。

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