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日本発スマートフォン用アプリ 中東、アジアで急成長のなぜ

クウェートでまず支持者が急増し、アラブ首長国連邦に飛び火。その後、中東各国を巻き込んだ――。民主化運動の波ではない。スマートフォン(高機能携帯電話)用のアプリケーションソフトの話だ。しかも、仕掛け人は日本にいた。

カヤック(神奈川県鎌倉市)の技術者、大塚雅和氏(左)と堤修一氏

旋風を巻き起こしたのは、インターネット関連ベンチャーのカヤック(神奈川県鎌倉市、柳沢大輔社長)が開発した無料アプリの「ナカマップ」。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」が国別に出す人気アプリランキングで1月3日、クウェートでのダウンロード数が1日で約8000件に跳ね上がった。

ナカマップはスマートフォンが備えるGPS(全地球測位システム)機能を使い、仲間同士で位置情報を共有。地図の上に顔写真が飛び出し、場所が確認できる。50人まで登録でき、近くにいる友人とチャットしたり、待ち合わせに使うこともできるという娯楽性と実用性を兼ね備えたアプリでもある。

ミニブログのツイッターや、SNS(交流サイト)のフェイスブックで、話題が伝言ゲームで伝わったようだ。

中東専門家らによると、クウェートは小国ではあるが目新しいものに敏感で、「サウジアラビアではやるものを先取りする」傾向があるという。宗教上の理由で女性が頭や全身を隠す中東圏で、異性間でのコミュニケーションの潜在的なニーズを掘り起こしたという読み筋もある。

昨年12月のリリースから5月下旬までの累計ダウンロード数は約8万5000件。うちトップ3を日本(3万1000件)、クウェート(2万3000件)、米国(6500件)が占める。クウェートでの人気の根強さがうかがえる。

「ナカマップ」を企画・開発した同社技術部の大塚雅和氏。日本から遠く離れた中東でのブームは全く予期していなかったが、「世界でより多くの人に使ってもらい、生活を変えるようなものを作りたい」と今後の抱負を語る。

カヤックは世界市場を意識し始めている。1月末から配信した「EncountMe(エンカウントミー)」で5カ国語に対応。英語と日本語に加え、ロシア語やフランス語、韓国語版を作った。

これは街ですれ違った他人と個人情報を交換できるアプリ。スマートフォンにあらかじめアプリをダウンロードしていれば、近場にどんなプロフィールの人がいるかが一目で分かる。範囲は半径3キロまで広げられる。使い勝手の良さを生かしつつ、言語を超えて新たなユーザー獲得に挑む。

 一方、日本らしさを前面に出したコンテンツもスマートフォンを媒介役に各国に浸透する。サイバーエージェントが日本で提供する仮想空間サービス「アメーバピグ」。2頭身のキャラクターが画面上を行き来し、友人や芸能人の分身とチャットしたり遊んだりできる。実は開発者の意図とは関係なく、インドネシアやフィリピンなどアジア各国で利用者数がうなぎ登りだ。

最初に進出した米国では1年強で会員数が約360万人に達した実績を持つ。米国を起点にフェイスブック経由でアジアにも波及したという。英語でも通じる「kawaii(カワイイ)」という価値観を通じ、日本発ソフトが容易に国境を飛び越す。

日夜、技術者が開発に明け暮れているミログ本社(東京・大田)は社内公用語を英語にする

視線は世界へ――。現在のアプリ開発者には、子どものころから自分の携帯電話を持つ「ケータイ世代」の20歳代、30歳代の若い世代が多い。物心ついたころにはバブル崩壊を迎えた20~30代前半は、海外勤務や海外旅行を敬遠しがちな内向き志向ともいわれがちだ。しかし、この世代の開発者は世界に打って出ようという"ガツガツ"系が少なくない。

東京大学と東京工業大学の学生ベンチャーから始まったソフト開発会社のミログ(東京・大田)。創業からわずか2年ながら、米マイクロソフトの本社で長く開発者を務めた日本人らを引き抜いている開発者集団だ。

同社は米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」に関連したソフト開発に特化する。「海外展開に打って出る」。社長を務める城口洋平氏は、野心を燃やしながらも屈託ない。6月18日から約1カ月間、開発者を引き連れて「上海合宿」を行うという。

上海では、ニューヨーク証券取引所に上場する中国のSI大手ヴァンスインフォ・テクノロジーズのオフィスを間借りする。缶詰めになって「ひたすらモノをつくる」。ミログは社内で英語を公用語化するといい、英語が公用語であるヴァンスインフォでの他流試合はその第一歩でもあるのだ。

4月からミログに移籍した山下盛史副社長。個人開発者として、写真を加工できる無料アプリ「FxCamera」を送り出した実績を持つ。同アプリの世界でのダウンロード数は累計800万を超える。ダウンロードのうち米国など海外が大半を占め、日本は15%に過ぎない。

従業員は10人強と小所帯。山下氏のような人材に刺激を受けながら、世界を舞台に日本発コンテンツで勝負したいと城口氏は話す。

ときに開発者の想像を超えた経路で広まっている日本発のアプリやコンテンツ。スマートフォンが各国で必携品としての存在感を強めつつある時代ならではのスピード感だ。「作品」が見いだされれば、縦横無尽に国から国へと人気の輪は広まる。百花繚乱(りょうらん)のアプリ開発競争は、日本発アプリやコンテンツの大航海時代の幕開けでもある。

(産業部 杉本晶子)

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