2017年12月17日(日)

省エネ、「目標値」設定の前に 詳細な実態把握が先決
中上英俊・住環境計画研究所所長

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2012/4/30 7:00
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 省エネルギーとは、エネルギーの効率的利用によってエネルギー消費の極小化を図ることだ。「エネルギー消費量を削減することが省エネ」とだけ考える傾向がまだ強いが、そうではない。

 省エネを考えるに当たって、まずはエネルギーの無駄遣いを無くすことが第一である。代表的な事例が、例えば待機時消費電力であったり、無人の部屋の電気のつけっぱなしであったり、過剰な冷暖房であったりする。家庭などにあっては、適正な水準の快適性や利便性が確保されれば、それを大きく上回るようなエネルギー消費が不必要であることは言うまでもない。

 2度の石油危機や、東日本大震災後の電力需給の逼迫下におけるエネルギー消費や電力消費の削減では、主には「節約・我慢」のレベルでのエネルギー消費の削減が実行された。これは、緊急避難的な非常時における対応と考えることが妥当だろう。ここでは快適性や利便性を落としてエネルギー消費量を削減したわけだ。

 本来の省エネは、快適性や利便性を損なうことなく、より少ないエネルギー消費で目的を達成することにある。これこそが本当の省エネの目的であるはずだ。

 このように省エネについての基本的な考え方を整理したが、最近の地球環境問題やエネルギー問題の審議会での議論には、この省エネに対して「国家的な目標値を定めて努力すべき」といった主張が聞かれるようになった。確かにエネルギー需要を省エネによって減らすことが出来れば、温暖化対策やエネルギー供給対策にとってきわめて有効な手段となることは間違いない。しかし、どのようなエネルギー消費の基準に対する省エネ目標値を設定することになるのだろうか?

 国家の非常事態であるならば、供給制約下での需要抑制といった形で目標値の設定が可能だろう。しかし、平時にあってこのような目標値の設定は何を根拠になされるのだろうか。家庭にあっても、エネルギー消費行動は多種多様である。業務用の分野でも、超高層ビルと小規模ビルではエネルギー消費構造は大きく異なっている。実際のエネルギー消費構造をきめ細かく分析して、省エネの可能性を検討することが肝要だ。このような過程を可能とするためにも、エネルギー消費構造のデータベースの構築を一日も早く実行すべきと考える。

 本来の省エネによるエネルギー消費の削減量を推計するには、上述のとおり、現状のエネルギー使用の実態をまず把握し、エネルギーの非効率的な用途や利用方法を診断・評価することが必要だ。

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