2017年12月18日(月)

「ゼロ円」になったCO2排出枠 電力マネー消え在庫の山

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2013/8/26 7:00
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 二酸化炭素(CO2)の排出に経済的な価値を付けようとした排出枠を巡る仕組みが揺れている。東日本大震災後に買い手が急減。排出枠はすっかり経済価値を失い、ゼロ円で移転する例も出始めた。それでも、国内排出枠の創出は続いており、買い手不在のまま、在庫は増え続けている。誰にも削減義務を課さぬまま、企業のボランタリーなCO2削減に期待を寄せた国内の排出枠の仕組み。ついに「ゼロ円」になった排出枠の在庫の山は、需要家不在で進んできた国内制度の矛盾を浮き上がらせている。

■もはや売り物ではなく「おまけ」

多摩美術大・八王子キャンパスの2012年の「芸術祭」。カーボンオフセットの費用は「ゼロ」だった

多摩美術大・八王子キャンパスの2012年の「芸術祭」。カーボンオフセットの費用は「ゼロ」だった

 「クレジット(排出枠)を売る? そんなこと考えていませんよ。おカネを払ってまで欲しい人なんていないんだから」――。省エネ機器を販売するアズビルの福田一成マーケティング本部部長は排出枠を巡る現状を嘆く。

 アズビルは省エネ機器などを買った顧客が排出枠の創出を希望する場合、1トンあたり1000円で作った排出枠を購入してきた。2008年にできた国内クレジット制度のもと、これまで6000トン近くの排出枠を顧客から買っている。だが、その大半は使い道がないまま。今もアズビルの手元に残っている。

 アズビルは多摩美術大学八王子キャンパスが昨年の「芸術祭」で消費した電力やガス、軽油などのエネルギーから出たCO2、70トンをオフセット(相殺)するため、同じ量の国内排出枠を多摩美大側に譲渡した。譲渡価格はゼロ円。多摩美大はキャンパスの空調改善などの省エネ工事をアズビルに発注している「お客様」だ。数千万円の工事の規模に比べれば、原価7万円の排出枠は小さい。もはや、排出枠は売り物ではなく、「おまけ」の扱いだ。

 ゼロ円であっても排出枠の受け取りを拒まれ、困惑している例もある。機械商社の山善は環境機器の販売促進のため、08年から取引先である販売店に、海外から購入した排出枠を付与してきた。販売した環境機器のCO2削減見込み量に合わせて、排出枠を与える仕組み。例えば、年10キログラムのCO2削減が見込める機器を売った販売店には、10キログラム分の排出枠を与えた。

 排出枠の管理はトン単位のため、細かい排出枠を譲渡されても販売店は管理ができない。そこで、権利譲渡後も山善が排出枠の管理を代行する形を取った。もっとも、権利を譲渡されたと言っても、ほとんどの販売店は使い方もよく分からない排出枠を山善に預けて放置したまま。山善の手元には、販売店に権利を移し替えた排出枠が5年間で、約3万トンもたまっていた。

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