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音楽業界、アップルモデルに活路 ネット配信強化

米アップルは22日、クラウド型音楽配信サービス「iTunesイン・ザ・クラウド」のサービスを日本で開始した。日本ではクラウド型の音楽配信における著作権の線引きが曖昧で、音楽業界もインターネットを介した配信に後ろ向き。しかしCD販売とネット配信の市場が同時に縮小する危機的な状況を受け、日本の音楽業界もネット配信に活路を見いだす方向にかじを切り始めた。新サービスで市場縮小に歯止めをかけられるか。注目が集まる。

低迷で歩み寄り

新サービスは利用者がインターネットのコンテンツ配信サービス「iTunesストア」で購入した楽曲をアップルのサーバーに保存、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)のiPhone(アイフォーン)やパソコン、タブレット端末など多様な機器で、聞きたいときにいつでも呼び出せる。グーグルのスマホ向け基本ソフト「アンドロイド」を搭載した端末では利用できない。

同サービスは海外では昨年10月に始まり、米国など37カ国で利用できる。日本では著作権上の問題などで開始が遅れていた。アップルが日本でのサービス開始に踏み切った背景には、著作権などを巡り日本の音楽業界との歩み寄りがあったからとみられる。著作者の権利を守る日本音楽著作権協会(JASRAC)は「(アップルへの)許諾を前提に、一定の条件を示して交渉中」としている。

世界の音楽配信市場では日本の低迷が際立っている。日本を除けば、世界の配信市場は拡大基調。IFPI(国際レコード産業連盟)によると、2010年は09年比8%増の46億4300万ドル。音楽産業に占める配信の割合は29%に達している。米国では昨年、初めて配信売上高がCD販売額を上回ったとみられる。

ところが日本では11年の配信市場は10年比16%減の719億円と2年連続の前年割れ。日本では従来型携帯電話への配信市場をけん引してきたソニー・ミュージックエンタテインメントなどの「着うたフル」もスマホでは機種によって利用できず、スマホシフトが逆風になっている。

クラウドサービスが始まる前の音楽配信でも日本は大きく出遅れた。アップルのiTunesストアが日本で利用できるようになったのは米国より2年以上遅い。日本の音楽業界が1曲100円程度という安価な価格設定に難色を示したからだ。

CD店が激減

しかし結果的には日本の音楽市場は世界と異質な「ガラパゴス化」が進み、音楽産業全体が縮小する結果を招いた。日本レコード協会によると、11年のCDの生産額は10年比6%減の2084億円。13年連続で前年実績を下回っている。日本レコード商業組合に加盟する音楽CD店は635店(11年4月時点)で前年比11%減。この10年で3分の1の水準に減少した。

米欧の音楽大手は動画共有サイト「ユーチューブ」に無料で演奏映像を流して広告で稼いだり、ライブの集客やTシャツなどの物販を増やしたりするなど、音楽配信から派生するビジネスを育てて収益の多角化を進めている。日本の音楽業界もCD頼みの体質をどこまで早く転換できるかが問われることになりそうだ。

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