今こそ風力発電で「産業立国論」を
編集委員 安西巧

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2012/10/23 7:00
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世界で原子力発電ビジネスへの逆風が強まるなか、洋上風力発電をはじめとする風力発電への関心が内外で高まっている。風力発電機は自動車や家電のように関連産業の裾野が広く、関連分野の有力企業には日本勢がひしめいている。

10月14日にリトアニアで実施されたビサギナス原子力発電所建設計画(2021年稼働予定)の是非を問う国民投票では、6割以上の投票者が「反対」票を投じた。同日行われた議会選挙(比例区)で第1党となった野党・労働党のV・ウスパスキフ党首は原発建設計画を当面は維持し、建設費や欧州電力網との統合費用などが明らかになった段階で再度国民投票を実施する考えを表明。同原発の受注が事実上決まっている日立製作所の中西宏明社長も「住民の合意を得られるように支援作業を続ける」とし、撤退の可能性を強く否定した。

リトアニアの国民投票は投票率が52.5%で、「反対」票が62.74%、「賛成」票が34.01%だった。同国の原発プロジェクト崩壊は労働党党首の発言で何とか食い止められたようにも見えるが、連立政権の一角を担う見通しの野党第3党「秩序と公正」を率いるロランダス・パクサス元大統領がビサギナス原発計画に反対の立場を取っており、プロジェクトの行方は依然視界不良だ。

世界の原発ビジネスへの逆風はますます強まっている。米国では6月に連邦高裁が米原子力規制委員会(NRC)の使用済み核燃料への対応が環境基準に合致しないとして中間貯蔵の安全指針の見直しを指示。これを受けてNRCは8月7日に5人の委員の全会一致で、原発の新設や運転延長の認可に対する最終決定を新たな指針策定まで凍結する方針を決めた。

7月に就任したばかりのアリソン・マクファーレンNRC委員長が安全指針見直しについて「期限を決めているわけではない」と策定作業が長引く可能性を示唆したこともあって原発ビジネス関係者に動揺が広がり、8月28日には米電力大手エクセロンがテキサス州南部のビクトリア市近郊で計画していた原発2基の新設プロジェクトを白紙撤回。10年にNRCに提出していた予備的許認可申請を取り下げた。

日本でも使用済み核燃料と高レベル放射性廃棄物の最終処分問題で新たな動きがあった。9月11日に日本学術会議が、廃棄物をガラスで固めて地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」を採用した2000年の決定について白紙見直しを求める提言を原子力委員会に提出した。

地震火山国である日本国内で、万年単位の期間で安定した地層を見つけるのは困難というのが理由。菅直人政権で内閣官房参与を務めた田坂広志・多摩大学大学院教授(原子力工学)は、この学術会議の路線変更によって原発で使用した核燃料から排出される高レベル放射性廃棄物は「地層処分」から「暫定保管」へと取り扱いが変わることになり、ゆくゆくは廃棄物の行き場がなくなるため日本国内で原発を稼働させることが事実上困難になると解説する(10月12日付日経ビジネスオンライン「『原発ゼロ社会』は選択の問題ではない。不可避の現実である」)。

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