金型の革命児は再生できるか

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2010/6/29 7:00
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破綻の引き金の元凶と指摘された新工場は山田氏のモノ作り革命を集大成したものだった。延べ床面積8500平方メートルの生産ラインに人影はなく、ロボット6台、切削加工機14台、ワイヤ加工機4台が24時間稼働。東京の本社から3次元CADでデザインした設計データを送信、工作機械が金属塊を削っていく。既存工場は携帯電話の試作金型など同じ金型を量産してきたが、ここでは毎回、形状や加工精度が異なる金型を機械が自分で判断して加工する。全工程を管理するネットワークシステムが遊んでいる機械を見つけると作業を割り振り、生産性を極限まで高めた。

破綻の引き金になった「零(ゼロ)工場」の全自動ロボット

破綻の引き金になった「零(ゼロ)工場」の全自動ロボット

製造業を原点から再構築する意味を込めて「零(ゼロ)」と名付けた工場は現在閉鎖中で、売却を検討中という。開設当時、視察に訪れた自動車部品メーカー首脳は「ベンチャーに負けた。日本でモノを作ってもアジアに負けない」と絶賛したが、インクス再建に手を差し出すことはなかった。

破綻直後の債権者会合で山田氏は「本来は金融危機や自動車業界からの受注減を見通して早めに対策を打つべきだった。再建を目指しもう一度日本のモノ作りに貢献したい」と頭を下げた。山田氏は退任後、沈黙を守ったままだが、日本のモノ作り再生に貢献したいという夢が未完に終わり、無念だろう。

09年10月の再生計画認可に伴い、再建に向けて歩み出したインクスだが、創業者の山田氏は退任し、「悪いうみを出し切る」と宣言した古河建規氏が代表に就任した。金型製造からコンサルタント事業に経営の軸足を移し、「10年は第2の創業元年」と位置付ける。モノ作り革命をけん引したかっての先進企業のイメージは影を潜め、まずは地道に再生計画を実行する腹づもりのようだ。

大手自動車メーカーの海外生産強化などで受注の回復は当面厳しく再建は前途多難だが、目をアジアに転じれば、決して悲観することはない。特に情報機器などで世界の供給基地の地位を固めた中国は今、賃上げによるコスト増を工場の自動化などで吸収することが不可避になっている。「インクス流」が活躍する新たな舞台になりそうなのだ。このチャンスをつかめるかは山田氏の後継者たちが真の起業家精神を持っているかどうかにかかっている。

(産業部 野中高秀)

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