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スマホ普及で縮むデジカメ市場、台湾EMSの苦悩

「脱・デジカメ」を模索

世界のデジタルカメラの受託生産を一手に引き受けている台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)会社が苦悩している。内蔵カメラの高機能化が進むスマートフォン(スマホ)の普及を受け、主要顧客である日本のカメラメーカーからの発注が急減しているためだ。生産拠点の中国大陸の人件費上昇も悩みのタネだ。EMS各社はデジカメ以外の部品・製品受注を拡大するなど、「脱・デジカメ」の道を模索し始めた。

デジタルカメラの展示会「CP+2013」のオリンパスのブースで小型デジカメを見る来場者(1月31日、横浜市)

「2013年のコンパクトデジカメの世界需要は前年比で20~30%減るだろう」。デジカメの受託生産で世界2位の華晶科技(アルテック)を傘下に持つ華晶集団の夏汝文・最高経営責任者(CEO)は見通しをこう語り、表情を曇らせる。「12年の需要も前年比で同じくらい減ったようだ」(夏CEO)というから衝撃的だ。

アルテックの危機感を裏付けるデータがある。世界のデジカメ生産の約9割を占めるキヤノンやニコンなど日本のカメラメーカーが加盟するカメラ映像機器工業会(CIPA)によると、12年のコンパクトの出荷台数は前年比21.9%減の約7800万台。13年も同17.6%減の6430万台を見込む。ピークだった08年に比べると4割の需要が消失することになる。

最大の要因はスマホによる需要の侵食だ。米アップルや韓国サムスン電子の新型スマホの内蔵カメラは800万画素程度で、コンパクトデジカメと遜色がない。スマホとデジカメの2台を持ち歩く必要がなくなっているわけだ。

台湾EMSはカメラ各社の内製分を除いた世界のコンパクトの組み立て需要の大半を請け負っており、影響は大きい。

台湾のデジカメEMSは世界最大手の佳能企業(アビリティ)や華晶科技、鴻海(ホンハイ)精密工業が3大メーカー。カメラ本体の設計に加え、センサーやレンズなどの中核部品の生産までも請け負う手厚いサービスで、日本のカメラ各社からの受注を増やしてきた。台湾全体のコンパクトの受注生産台数は12年は約4000万台だったもようだ。

 台湾EMSはここ数年、生産拠点である中国の人件費上昇に悩まされてきた。佳能は中国の2工場に約7000人の従業員、華晶は1工場に5500人の従業員を抱える。佳能の工場がある広東省・東莞市と同じ省内の深セン市は過去10年間で最低賃金が約3倍に上昇。佳能の11年12月期の連結営業利益は前期比50%減の13億台湾ドル(約41億円)、華晶は1億4000万台湾ドルの赤字に転落した。ここに12年から本格化したコンパクトの受注減が加われば、今後の業績悪化は避けられない。

華晶集団の夏汝文CEOは「医療・車載用カメラの受託生産を早急に伸ばしたい」と語る

華晶の夏CEOは「世界のコンパクト需要は15年には5000万~6000万台まで減る」と見込む。このうち約半分とされる受託生産台数も同様に落ち込むことになる。一眼レフやミラーレスなどレンズ交換式のデジカメ市場は順調に拡大しているが、利益率が高いためカメラ各社は自社生産志向が強い。「今後も受託生産はあまり増えない」というのがEMS業界のもっぱらの見方だ。

各社は生き残りをかけて「脱・デジカメ」に走り出した。佳能はスマートフォンなど携帯電話向けのカメラモジュール(複合部品)の生産拡大に着手。足元の売上高(12年1~9月期で332億台湾ドル)に占める比率はまだ3%程度と小さいが、「できるだけ早く10%まで引き上げたい」(広報)と必死だ。

華晶は医療用や車載用カメラの受託生産需要の取り込みを急ぐ。夏CEOは「後方などを確認するための車載カメラが14年には米国で標準装備になる見通しだ」と期待する。医療用ではカメラ以外に、糖尿病患者が自分で血糖値を検査するための小型機器などの受託生産も始めている。こうした非デジカメ分野が足元の売上高(同196億台湾ドル)に占める比率は15%だが、「13年には30%、15年には50%以上にする」(夏CEO)

一方、夏CEOは顧客の日本メーカーにも警鐘を鳴らす。「サムスンの脅威にやや無頓着でないか」。サムスンはカメラ市場では後発組だが、撮影した画像データを無線でパソコンに送れるカメラなど新機軸の商品を続々と開発。「日本企業は誰かが成功したらはじめて追随する。ブームになってからでは遅い」(夏CEO)

世界のIT(情報技術)端末市場では日本製テレビやスマホの販売が苦戦。そうしたなか、日本勢が高シェアを誇るデジタルカメラは「最後の砦(とりで)」ともされるが、今後も維持できる保証はない。業界の予想を超えて進むコンパクトの需要減は、台湾のEMS同様、日本のカメラメーカーにも生き残りをかけた変革を迫っている。

(台北=山下和成)

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