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原発よりまず水力 「光通信の父」西沢教授の新たな挑戦

編集委員 中山淳史

原子力発電の前に水力じゃないのか――。重電メーカーも経済産業省も日本の原発技術を世界に売り込もうと熱が入るが、そう異論を唱えているのは今年83歳になる西沢潤一・上智大学特任教授だ。「光通信の父」などと呼ぶ人も多い西沢氏は最近、東南アジアなどと日本を結ぶ、水力発電の大送電網構築を呼びかけている。

まずは西沢氏の功績について簡単に触れよう。

発光ダイオード(LED)や半導体レーザーの開発に最も貢献した日本人はだれ? ずばり、西沢氏だ。日本の半導体産業はもちろんだが、その評価は世界でも高く、米電気電子学会(IEEE)などは「西沢潤一メダル」という名前の賞を設けている。同分野で功績をあげた研究者に贈る権威のある賞だ。

その西沢メダルは2006年、DRAMセルの発明に貢献した日本人研究者に贈られたが、3人は東北大学時代に西沢氏の薫陶を受けた仲間だった。フラッシュメモリーの開発で世界的に知られた舛岡富士雄氏も、西沢氏が恩師である。

そんなミスター半導体が最近、関心を持っているのは、自身も実用化に貢献したパワー半導体を使っての水力発電と直流送電システムだ。

「二酸化炭素(CO2)を削減するには脱火力が必要。であれば、安全性や効率、コストを総合判断し、まずは水力ということではないのか」。上智大を訪ねると、西沢氏はそう語り始めた。

現在、仲間内で温めている構想が東南アジアで発電し、日本に送電するアイデアだ。とっぴな発想と思う人が大多数だろう。ただ、「理論的には可能であり、政府や関連企業は一度、真剣に議論する余地がある」と主張する。

まず、日本の水資源は使い切ったといわれている。だが、「東南アジア、とりわけカンボジアなどにはまだ豊富。日本も活用が可能だ」と西沢氏。大規模な発電所を建設しても送電が問題となるが、西沢氏は「直流送電にすれば、理論上は1万キロから2万キロ先だって電気は届く」と言い切る。

送電といえば、通常は交流が主流になっている。だが、それを直流にしたら送電ロスは大幅に減り、「北極から南極への送電も可能になる」ということらしい。

いろいろ、議論はあるだろう。だが、原子力、風力、太陽光とグリーンテクノロジーが広がりを見せる中、最も身近な資源の1つだった水力も実は、「再評価されていい」という西沢氏の主張である。世界では太陽光発電の普及で「直流革命」が叫ばれ、交流・直流を切り替えるパワー半導体技術も大きく進化している。だとしたら、この際、世界の最適地で一括発電する壮大な西沢プランも検討してみていいのでは。

西沢氏はこんな試算をしている。「全世界の降雨の総量とその地点の高さを世界中で調べていくと、水力でどれだけ世界の電力をまかなえるかが推測できる。実は、それは全人類が消費するエネルギーの総量より大きいことがわかってきた」。

直流と交流の送電技術を巡る戦いは100年前にもあり、直流送電を開拓してきたエジソンが敗れた歴史がある。果たして、100年後の日本でも雌雄を決するような戦いが始まるのか。西沢氏は今、関係省庁や企業を回り始めたところ。今後の展開が注目されている。

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