アップルに気づかされたプリント基板材料の意外なニーズ

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2012/8/21 7:00
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はんだなどプリント基板材料を手掛けるタムラ製作所には隠れたヒット製品がある。プリント基板の表面に塗布し、余計な部分へのはんだの付着を防止する絶縁材「ソルダーレジスト」だ。同社はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など超小型、薄型の機器で使われる「フレキシブル基板」向けのソルダーレジストに2009年に新規参入。スマホ最大手の米アップルに採用され、4年目の今期は年12億円強の売り上げを見込むまでに育った。だが、その成功のきっかけは製品の性能ではなく色にあった。

「iPad」の液晶パネルと本体基板を接続するフレキシブル基板。真っ黒にして配線を確認できないようにするためにタムラ製作所のレジストが採用された模様(日経エレクトロニクス提供)

「iPad」の液晶パネルと本体基板を接続するフレキシブル基板。真っ黒にして配線を確認できないようにするためにタムラ製作所のレジストが採用された模様(日経エレクトロニクス提供)

「『白が作れるなら黒もやれるだろう?』とフレキシブル基板メーカーに言われたのが最初だった」。タムラ製作所で電子化学事業の開発を束ねる清田達也執行役員は明かす。

同社は09年、フレキシブル基板で使える白色のソルダーレジストを開発して市場に参入した。フレキシブル基板に発光ダイオード(LED)を取り付け、液晶テレビのバックライトや照明などに利用する用途を見込んだ。「光を反射してLEDの光量を効率的に利用できる白のレジストに需要がありそうだと考えた」(清田氏)。

白のソルダーレジストは光を反射する「フィラー」と呼ぶ素材を大量に混ぜ込めばできる。だが単に混ぜ込むだけではレジストが硬くなり、フレキシブル基板の利点である柔軟性を損なってしまう課題があった。そこで同社は、基材となる樹脂を改良して柔軟性を高め、フレキシブル基板を折り曲げてもはがれないレジストを完成させた。実は従来手掛けてきた一般プリント基板向けのレジスト部門の収益が年々悪化しており、フレキシブル基板向けの「白レジスト」は起死回生の一手になるはずだった。

ところが「期待に反してさっぱり売れなかった」(清田氏)。そこで高い折れ曲げ性をアピールするために、白レジストを塗布したフレキシブル基板で折り鶴や戦闘機を作って見せたりもした。それがあるフレキシブル基板メーカーの目に留まった。白は要らないが、黒のフレキシブル基板用がもしできるなら採用を検討すると言ってきたのだ。

開発現場は戸惑った。黒を作ること自体は難しくないが、なぜ黒が必要か分からなかったからだ。余計なはんだの付着を防ぎ、基板を保護し、絶縁するというレジスト本来の目的と、色は関係ないはず。フレキシブル基板は製品内部で使われるため、一般の目には触れない。実際、一般的なフレキシブル基板用レジストは青や緑などが多く、レジストを使わないこともある。ところが先方は「つや消しの黒、色はなるべく漆黒に近づけて」などとまるで外装デザイン向けのように色味まで細かく指定してくる。半信半疑のまま、幾つかサンプルを作って持ち込んだ。

タムラ製作所の黒レジストを塗ったフレキシブル基板で戦闘機を折った例

タムラ製作所の黒レジストを塗ったフレキシブル基板で戦闘機を折った例

一般的なフレキシブル基板の例。基板素材のままで配線が見えている

一般的なフレキシブル基板の例。基板素材のままで配線が見えている


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