三菱ケミカルの「KAITEKI」革命

2011/1/24 7:00
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三菱ケミカルホールディングス(HD)が2011年度から独自の経営管理指標を導入する。その名も「KAITEKI指標」。環境負荷の低減や人間の健康、快適な生活など企業が提供する価値の総称で、各事業がどれだけのKAITEKI価値を生んだかを指数化し、経営判断に生かすという。発案者の小林喜光社長は「ISOなど規格・指標作りはほとんど欧米任せ。かつてKAIZENという言葉が世界に広がったように、新しい価値観を世界に発信したい」と意気込んでいる。

三菱化学が開発したバイオ樹脂「デュラビオ」(北九州市の三菱化学黒崎事業所)

三菱化学が開発したバイオ樹脂「デュラビオ」(北九州市の三菱化学黒崎事業所)

「KAITEKIとは何か」。10年8月、小林社長はグループの役員20人を集めた2日間の合宿研修で徹底的に議論させた。トップの奇抜な発想に当初、戸惑う役員も多かったという。議論の狙いはROE(株主資本利益率)など経営学的な指標だけにとらわれない発想への転換。持続的成長を目指すための新しい企業理念ともいえる。

KAITEKI指標の中で最も重要視しているのが環境への配慮だ。15年度までの経営目標として「生産段階の環境負荷を05年度比で30%削減する」「再生可能原料・材料の使用量を原油換算で6000トンにする」「製品を通じて400万トンの二酸化炭素(CO2)削減効果を出す」といった項目を策定。三菱化学、三菱レイヨンなどHD傘下4事業会社がそれぞれ各年度ごとに目標を達成するための事業計画を定める。

4月1日付で「chief・KAITEKI・officer」に就任する越智仁取締役は「経営指標としての重さは財務的な価値が7割、KAITEKI価値が3割」という。いかに収益性が高くても、環境・健康・快適といった価値を提供できない事業は継続しない。将来はKAITEKI指標の達成度合いを各事業会社の従業員のボーナスに反映する制度も検討している。このため各事業会社はKAITEKI価値を生み出す新事業への取り組みが試される。

植物由来のポリカーボネート樹脂を生産する三菱化学の試験設備(北九州市の黒崎事業所)

植物由来のポリカーボネート樹脂を生産する三菱化学の試験設備(北九州市の黒崎事業所)

KAITEKI価値を追求する新事業の一例が三菱化学が開発したバイオ樹脂「デュラビオ」。トウモロコシなどから抽出する原料をもとに作るポリカーボネート樹脂で、石油由来のものと比べて製造段階で樹脂1キログラムあたり3キログラムのCO2を削減できるという。

最大の特長は、植物由来ながら従来のポリカーボネート樹脂より性能が高いこと。透明度や耐熱性、表面の硬さなどで従来の樹脂を上回っており、ガラスの代替やLED(発光ダイオード)の樹脂カバーなど新たな用途が見込める。従来のバイオ樹脂は耐久性などで石油由来より劣るケースが多かっただけに、本格的な需要拡大が期待できそうだ。

このデュラビオをKAITEKI価値で測るとすれば、製造段階のCO2削減だけでなく、ガラス代替による自動車の軽量化など使用・廃棄段階でも環境負荷の低減につながる。またLED照明の性能向上などで消費者の快適にも寄与する。デュラビオは2012年から量産を始めるが、こうしたKAITEKI価値の高い事業を数多く育てることが新指標の狙いだ。

「20世紀は自動車や電機が成長した物理の時代だったが、21世紀は化学の時代だ」と小林社長はいう。三菱ケミカルが新指標をもとに石油化学に依存したポートフォリオ(事業構成)からの脱却に成功したとき、「KAITEKI」は世界の共通語になるかもしれない。

(産業部 磯貝高行)

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