信頼揺らぐトクホ 「科学重視」で復活なるか
編集委員 矢野寿彦

2010/9/24 7:00
保存
共有
印刷
その他

健康ブームを追い風に着実に市場を伸ばしてきた特定保健用食品(トクホ)が正念場を迎えている。2年ごとに実施している日本健康・栄養食品協会の調査によると、2009年度の市場規模は5494億円と前回(07年度)よりも2割近く減り、97年度の調査開始以来、初の減少となった。

価格が高い割には本当に科学的に生活習慣病の予防に役立つのか――。消費者の間に疑問が出始めるなかで、花王の食用油「エコナ」に、体の中に入るとがんを引き起こすかもしれない物質に変わる可能性のある成分が含まれるとする「発がん性問題」が浮上。同社が昨年秋、販売自粛に乗り出したことで、市場縮小に拍車がかかったようだ。

消費者庁は昨年11月から「健康食品の表示に関する検討会」を開催してきた。一時は廃止との見方もあったトクホ制度だが、結局は維持される方向で、「消費者に誤解を与えないような表示方法にすべきだ」とする方針などを盛り込んだ論点整理が、今年7月にまとまった。

消費者庁は、「誇大広告」を改め、より科学的データを重視した表示などを促す指針作りに乗り出す。これまでのような「宣伝偏重」を改め、バイオ技術を使った商品開発の姿勢がトクホ各社に求められることになるが、そう単純にいきそうにもない。

トクホへの消費者の関心は高い(2009年9月25日に都内で開いたエコナの安全性を問う会)

トクホへの消費者の関心は高い(2009年9月25日に都内で開いたエコナの安全性を問う会)

そもそも健康への効能があいまいという点がトクホ各社にとっては大きな武器でもあり、これを巧みに利用して広告・宣伝をうち、市場拡大につなげてきたからだ。

確かにほかの健康食品と一線を画すため、トクホの承認を得るには、新薬開発をまねた安全性試験や有効性試験を実施しなければならない。ただ、その試験規模はとても小さく、透明性に欠く。データもいくつか試験を繰り返し、都合のいい結果のみを明らかにしているともされる。病気の人を対象に開発した医薬品が結果が分かりやすいのと違い、トクホは健康な人向けに開発した商品だけに、消費者のだれもが効能を実感できるとも限らない。

食品の健康に与える影響を誇大に信奉する「フードファディズム」という概念を日本に初めて紹介した高橋久仁子群馬大教授は「トクホは許可された範囲内で効果を記載しなければならないのに、過大な期待を抱かせる広告・宣伝が目立つ」と話す。

09年末までにトクホとして表示許可・承認された食品は883品目。なかでも脂質や血糖値に関与する商品は約35%。といっても各商品に独自技術が盛り込まれているわけではなく、多くは食物繊維の一種である「難消化性デキストリン」という成分を混ぜているだけだ。

これまでトクホ各社は商品力を主に「広告・宣伝」で競ってきた。エコナ問題を契機に抜本的な見直しが進むなか、再び人気を取り戻すためには、安全性や効果など科学データの裏付けについて誤解を生まない情報提供をしながら、技術で競う姿勢が欠かせない。

保存
共有
印刷
その他

関連記事

日経産業新聞のお申し込みはこちら

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]