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ロケット打ち上げ、育て若者 東大阪の創機システムズ

モノづくりの中小企業がひしめく大阪府東大阪市で異彩を放つベンチャー企業がある。技術者育成やロボット開発を手掛ける創機システムズ(大阪府東大阪市、荻本健二社長)だ。小型ロケットや模擬人工衛星の設計・製造から、打ち上げまで自分たちの手で実施するプログラムを通じて、次代のモノづくりを担う若者の育成を目指す。

2月9日、和歌山市内で小型ロケットが打ち上げられた。打ち上げから5秒後には模擬衛星が放出された。その後、高度約300メートルに達したロケットからパラシュートが開き、無事、地上に「帰還」。ロケットや衛星の設計から打ち上げまで携わった若者らから、歓声が上がった。

打ち上げに参加した若者らは創機システムズが運営する「創機工学塾」の訓練生だ。小型ロケットなどを自ら作り上げながら、ロボットの制御技術を学ぶ。2010年度から大阪府の緊急雇用創出基金事業にも採択された。

同事業に基づき、毎年、再就職などを目指す20~30代の若者、15人前後が同社に訓練生として雇用される。給料をもらいながら、各チームに分かれ、約1年間かけて小型ロケットや模擬衛星、無人の垂直離着陸機をそれぞれ開発・製造する。12年度の訓練生は打ち上げ終了後に「卒業」。うち半数の訓練生が新たな就職先をみつけたという。

これから募集を始める13年度の新訓練生は、12年度生が残していった1000ページにも及ぶ報告書を参考にしながら、さらに性能を改善させた新型ロケットを開発する。荻本社長は「高卒や文系など全く理系の知識のない人間でも、マイクロコンピューター(マイコン)をプログラムして、ロケットなどを制御する仕組みを理解できるようになる」と胸を張る。

同社は2007年の設立。川崎重工業で宇宙開発部門の責任者を務めた荻本社長が60歳で同社を退職して立ち上げた。きっかけは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に出向中、東大阪の中小企業が集まり立ち上げた人工衛星「まいど1号」計画に携わったことだった。

プロジェクトに関わる中で、中小に「システム設計」の概念がないことを痛感した。皆、それぞれの分野で一流の仕事をする。とはいえ、請負仕事ばかり。「いわれた仕事に水準以上の技術で応えるのは得意。ただ、どんな目的でどんなものをつくるか、そのためにはどんな部品を使ってどう組み立てるべきかという全体像を描ける人がいなかった」と振り返る。

従来のような経済成長が望めない中、「これからは与えられた課題の解決だけでは生き残れない」(荻本社長)。そのためには、製品全体の仕組みである「システム設計」を理解できる若手技術者の育成が重要と考えた。

システム設計のテーマとして着目したのが、ロボット技術だった。「動きを制御する意味ではロケットや人工衛星も空飛ぶロボット」(荻本社長)だからだ。企業からの従業員研修の受託も含め、これまでに約300人が学んだ。

12年6月期の売上高は約1億円。13年6月期も前の期並みに売り上げを維持できる見通しだ。今は売上高の9割を工学塾からの収入に頼っている。経営基盤を強化するため、第2の柱となる事業の育成にも力を入れる。

その一つが、独自製品の開発・販売だ。自社開発したマイコンボードなどを販売。ロケットなどの制御に使うセンサーや無線技術を応用した遠隔監視システムの構築など、工場の製造ラインの自動化支援事業の売り込みも強化している。

自動化支援システムには引き合いも強い。「システムを納めた後はメンテナンスが必要となる。うちが人材育成した若者を雇ってもらえる機会も増える」と荻本社長は期待する。

今後は研修システムの外販も視野に入れる。人材育成という切り口から、日本のモノづくりの活性化に寄与しつつ自らも成長していくため、着々と次なる布石を打つ。

(東大阪支局長 中村厚史)

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