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「電力見える化」、商機は見えたか?

家庭の節電の切り札として、エネルギー使用量を「見える化」し、省エネを目指す家庭内エネルギー管理システム(HEMS)が注目を集めている。政府は4月から対応機器への補助金の支給を開始。関連企業は相次ぎ事業強化を打ち出している。当面は"補助金特需"にわきそうだが、本格普及につなげるビジネスモデルは見えてきただろうか。

パナソニックが昨年発売したHEMS制御装置「ECOマネシステム」。4月に経済産業省のHEMS補助金の対象機器の認定を受けたところ、前年の2倍を超えるペースで売れている。

パナソニックのHEMS機器。モニターにエネルギー使用量が逐次映し出される

同システムはエネルギー計測器、分電盤、モニターを付けたコントロールパネルで構成。家庭での電気・ガス・水の使用量や太陽光発電の発電量をモニターに映し、省エネを促す。昨年は福島の原子力発電所の事故を受けて節電の必要性が高まったにもかかわらず、年1万セットの販売目標を達成できなかった。担当者は「補助金の効果は大きい」と漏らす。

経産省の補助金は、同省から委託を受けた団体が補助対象に認定したHEMS機器を購入する個人に一律10万円を支給する内容。同社のECOマネシステムは約20万円だが、補助金を使えば半額になる計算だ。

補助対象は43機器(7月18日時点)。リストには東芝のグループ会社やシャープ、NECなど電機・情報大手のほか、大和ハウス工業や積水ハウスなどの住宅メーカー、NTT東日本も名を連ねる。

民間調査会社の富士経済(東京・中央)によると、HEMSを中核にしたスマートハウス(次世代省エネ住宅)関連の国内市場は、2020年に11年に比べ約3倍の約3兆5千億円に達する見通しだ。需要拡大を当て込み、関連企業は商機をうかがっている。だが、国全体の電力削減に貢献するにはまだ時間がかかるのではないか。

当面は"特需"もあって、新築の戸建てを中心に導入が進む見通しだが、全体のボリュームを考えれば、既存の住宅への設置をいかに進めるかがポイントとなる。設置のネックとなっている配線工事が不要なシステムも出ているが、どこまで浸透するかは未知数だ。

HEMS機器も、いまだ発展途上だ。現在は「使用量の見える化」が中心的な機能だが、東京電力をはじめ電力各社は通信機能を持つ次世代電力計「スマートメーター」の導入を進めつつある。東電はこのメーターの仕様を、従来案から見直す方針をこのほど発表。インターネットで標準的な通信規格を採用、外部からの接続やデータ利用がしやすくなる。

スマートメーターとの連携でHEMSの機能を拡充しやすくなる反面、単なる「見える化」だけでは、お金を払う人は少なくなるはずだ。

東芝グループの新しいHEMS機器。ITアクセスポイント(左)とエネルギー計測ユニットで構成

パナソニックや東芝は一歩進め、家電の一括制御による節電効果を売りにする方針だが、HEMSに対応した家電製品が出てくるのはこれからだ。多種多様な家電と制御装置を接続し、利便性を損なわずに目に見えるレベルまで節電できるシステムを実際に構築できるかが、今後の事業の正否を握る。

事業を成り立たせるもう1つの可能性は、HEMSをきっかけに構築した家電とネットをつなぐインフラの活用だ。

「家電とネットの融合」を巡っては、電機業界には苦い経験がある。

パナソニックや東芝、日立製作所など電機大手は1997年、異なるメーカーの家電を接続する共通規格「エコーネット」を設定するコンソーシアムを立ち上げた。

家電をつないで制御することで、効率的な利用や遠隔制御、防犯システムとしての活用などを提案したが「消費者のニーズを掘り起こすことはできなかった」(関係者)。

こうした経験も踏まえ、日立製作所は4月から福岡市で大規模な実証試験に取り組んでいる。

約1年間にわたり、賃貸マンションの100世帯を対象にHEMS機器を設置。社員を実際にその一室に住まわせ、住人の生の声を集め、システムの改良を進めている。

電力使用量が極端に多い場合や少ない場合にメールを送信することで、部屋や住人の異常を知らせるサービスを実施。モニターを使った宅配サービスや地域ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)との連携なども進めるが、「まだ将来のビジネスモデルは見えていない」(日立コンシューマエレクトロニクスの助田裕史EMSソリューション部部長)。

電力料金の節約や付随するサービスの価値向上などを通じ、消費者にHEMS導入の効果をいかにわかりやすく「見える化」できるか。本格普及に向けては、消費者目線に立った具体策が欠かせないようだ。

(産業部 山腰克也)

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