英医療制度などと情報システム 日立、ビッグデータ分析
日立製作所は18日、英国マンチェスター地域の病院など公的医療制度全般を管理する国営医療制度(NHS)などと、医療情報システムの共同開発で合意したと発表した。患者の健診・医療データなど膨大な情報(ビッグデータ)を分析し、病気の予防や医療費の削減につなげる。
医療費の増大や高齢化などの課題を抱える日本はIT(情報技術)の医療分野への適用が進んでおり、今後、日本のIT企業の海外受注が広がりそうだ。
10月までに計画をまとめ開発に乗り出す。開発分野は3つ。(1)糖尿病など生活習慣病患者の健診・医療データを解析し、重症化や合併症を抑える予防医療を探る(2)かかりつけ医と他の病院を結ぶネットワークが扱うデータの範囲や量を拡大する(3)データ解析で効率の高い治療方法などを割り出し、医療費を減らす。
日立グループからは日立コンサルティングも参加し、20~30人規模で開発に当たる。現地の医療研究機関や情報システム開発のNPOも参加する。
日立は昨年5月、社内にヘルスケア事業推進センタを新設した。グループ企業が持つ医療の技術や資産を結集して新規事業を開拓する狙い。今回の共同開発はその第1弾。
NHSとシステム開発を進めることで、日立メディコの超音波診断や、日立ハイテクノロジーズの遺伝子検査などグループが持つ技術や機器の提供にもつなげたい考え。
日立は医療機器なども含めた医療分野の2012年度の売上高を約3300億円と見込んでいる。情報・通信システム社は、海外で医療や社会インフラなどのシステムを積極的に売り込み、売上高に占める海外比率を現在の25%から15年度までに35%に引き上げる目標を掲げている。
ビッグデータ解析を健康管理に役立てる動きは広がっている。富士通はグループ社員10万人の健康診断データと、一部社員から収集した日々の血糖値や運動量、食事のデータなどを解析。糖尿病になるかを予測する実証実験を実施した。三井情報は14年にもがん治療に特化したゲノム(全遺伝情報)解析サービスを始める。(ロンドン=松崎雄典)