交流が生む広告効果 - 日本経済新聞
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交流が生む広告効果

近藤正晃ジェームス・ツイッター日本法人代表

インターネットのサービスの多くがオンライン広告を掲載している。自分のページに載っているオンライン広告を見て、ドキッとした経験がある人も多いのではないか。先日も40代で独身の友人が、ソーシャルメディアの自分のページに、自分の出身大学の卒業生に向けた結婚相談サービスの広告が表示されることに複雑な思いを抱いていた。結婚に焦る自分の気持ちを、あまりにも的確に反映している広告だったからだ。

テレビ広告市場と比較すると、オンライン広告の市場規模はまだ小さい。それでも、既存のマスメディアの成長の低迷を尻目に毎年大幅な成長を続け、今や雑誌や新聞などの他のマスメディア広告媒体を抜くまでに成長した。広告の世界では新しいソーシャルメディアの広告は、オンライン広告の中でも特に注目を受けているようだ。

ソーシャルメディアの広告は、どのようにユーザーの関心事を的確に反映した広告を掲載するのか。

ひとくちにソーシャルメディアの広告と言っても、その仕組みや方法は様々だ。例えば交流サイト(SNS)「フェイスブック」では、ユーザーの年齢、性別、友人関係、生活スタイルの情報をもとに「40代の独身男性らしいから、クルマや不動産の広告を出してみよう」ということが可能になる。

この方法はテレビや雑誌などにも幅広く利用されている手法に近い。「主婦向けの番組だから、家庭用の製品の広告を入れよう」「40代の男性向けの雑誌だから、ちょっと高級な時計の広告もいいんじゃないか」という考え方だ。前述の友人たちが目にした結婚相談サービスの広告も、この方式に基づいて表示されている。

ツイッターの場合は、登録時に年齢や性別などの入力を求めない一方、フォローしているアカウントをみると、その人の興味の対象が直接的にわかる場合が多い。例えば、日産やトヨタをフォローしているようであれば「クルマに興味を持っているらしい」と想定できる。

 また、フェイスブックもツイッターも、昔からあるクチコミのシステムが機能している。ツイッターの場合は自分がフォローしている人たちによって広告主のメッセージがリツイート(転送)されて目につくことも多い。「おもしろいと思った」「役に立つと思った」から他の人にも教えてあげようという考え方だ。ファストフードやコンビニのお得なキャンペーンのツイートが多くの方々にリツイートされるのは、みんなにも教えてあげようという思いもあるに違いない。

みんなが発信するメッセージでつくられているソーシャルメディアでは、みんなが企業について行う会話が広告となる。例えば、誰かがある商品についての質問をツイートする。企業がそのツイートを見つけて積極的に声をかけることで、その利用者の質問に答えたり満足度を上げたりすることができる。

その会話は一対一の電話サポートとは異なり、ツイッターの全てのユーザーが目にすることができる。周りでそのやり取りを見ているユーザーは、ふたりのツイートを見ながら商品への理解を深めていったり、企業への好感度を上げていったりできるのだ。

広告予算も限られている昨今、少しでも効率良く結果に結び付けたいと考える企業は多い。個人の生活スタイルや嗜好がわかりやすいソーシャルメディアは、そんな企業が費用対効果が高い広告を展開できる場所でもある。

[日経産業新聞2012年10月18日付]

 この連載は変革期を迎えたデジタル社会の今を知るためのキーパーソンによる寄稿です。ツイッター日本法人代表の近藤正晃ジェームス氏、カヤック社長の柳沢大輔氏、トヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏、ネットイヤーグループ社長の石黒不二代氏らが持ち回りで執筆します。
(週1回程度で随時掲載)

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