2019年5月25日(土)

「エコアイランド」宮古島のジレンマ

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2010/11/22 7:00
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巨大な建屋の中で、真新しい銀色の施設が蒸気を噴き上げながら動いている。沖縄県宮古島市で地元の石油販売事業者、りゅうせき(沖縄県浦添市)が運営する島のサトウキビからバイオエタノールを作る工場。"地産地消"のエネルギー作りを担う施設と期待を集めたが、生産を大規模に進めるにあたり問題が浮上している。製造するバイオエタノールの15倍もの量が出る真っ黒な色をした残さ液の処理だ。栄養分を多く含んでいるものの、そのまま畑にまくと、島の水源である地下水を汚染してしまう可能性がある。国の支援する「エコ」な試みが、新たな環境問題を生み出しかねない。安全な水と自前でのエネルギーの確保へ、南の島で両立への模索が続いている。

3年前の夏。今よりも一回り小さなバイオエタノール工場のそばに近づくと、異様なにおいが鼻をついた。エタノール製造の際に発生した残さ液が屋外のプールに放置され、腐ってボコボコと泡を浮かべていた。島内ではこれだけの液体廃棄物を処理できる施設はなく、遠く沖縄本島まで船で運ばれ、処理していたという。大量の副生成物を石油で走る船で運ばなければならないのなら、植物から作ったエタノールも、とてもエコな燃料とは言い難い。

沖縄・宮古島南部の地下ダムには澄んだ水が満々と蓄えられている

沖縄・宮古島南部の地下ダムには澄んだ水が満々と蓄えられている

当初から、糖分が多く残る残さ液は肥料としてサトウキビ畑にまいて、養分を土壌に戻そうとする構想だった。だが、真っ黒な色素はわずか80センチメートルの厚さしかない宮古島の表土で分解されず、そのまま地下水のある層まで通り抜けてしまいかねない。水源が真っ黒い色に汚染される原因になる可能性があることから、一部の農家だけでなく市役所の中からも反対の声が上がり、肥料として使う動きは立ち消えになった。処理に困ったりゅうせきが、一時的に屋外に残さ液を置いていたのが腐り、においを発していたのだった。

サンゴ礁でできた平たんな島である宮古島では、ごく最近まで淡水の確保は切実な課題だった。雨の降る量は多くても、しみ込みやすい土壌で地表には残らない。川と呼べるほどの川はないなかで、島は長らく水不足に悩んでいた。宮古島でサトウキビ産業が発達したのも、少ない水で大きく育つ農作物であったことが大きな理由だった。

水を巡る環境が大きく変わったのは地下水を地下でせき止める、国内有数の規模の「地下ダム」が建設されてから。宮古島の地下にはサンゴによってできた多孔質の透水層が薄い表土の下に厚く存在している。島の地下にはいくつもの地下水の流れがあり、コンクリート製の壁を「下流」に埋めることで、地下水の流れをせき止めた。水をためることができなかった島に、待望の水がめができたのは1990年代になってからだった。

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