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10トントラック並みコンテナも JR貨物、モーダルシフト加速

トラックによる貨物輸送を環境負荷が少ない鉄道や船舶に移す「モーダルシフト」。有力な担い手である日本貨物鉄道(JR貨物)が存在感を高めている。環境保護や労働力不足の観点から、二酸化炭素(CO2)排出量や作業人員を抑えられる鉄道への関心は増す。荷主の様々な要望にどう対応していくか――。JR貨物の挑戦が随所で本格化している。

10トントラックと同じ積載量の「31フィートウイングコンテナ」

「鉄道貨物輸送はエネルギー効率が非常に良い。我々が荷主の期待に応える施策を実行できれば、モーダルシフトの流れを一段と加速させられるはずだ」。収益拡大の好機と見て、田村修二社長は言葉に力を込める。

今秋、同社が初めて製作した「31フィートウイングコンテナ」は重要戦略の1つだ。大型トラック(積載10トン)と同等の容積、積載重量を持つため、輸送単位や荷役作業を変更せずに、トラックから鉄道に輸送手段を切り替えられるためだ。「これまで鉄道貨物輸送を利用してこなかった新規の顧客を開拓する」。担当者は意欲を見せる。

実際、31フィートコンテナの滑り出しは上々といえる。12月上旬までに、近畿から九州へ運ぶ家電製品、首都圏と中国地方を往復する加工食品など4件が成約済み。現在も10社と商談中で、2012年度中には製作した25個のコンテナすべてがフル稼働する見通しだ。

拠点の隅田川駅も来春、46億円をかけて増強を完了する

モーダルシフト促進の条件には「駅の近代化」も欠かせない。北海道や東北、北陸地区と首都圏を結ぶ輸送力の増強を狙い、拠点の「隅田川駅」(東京都荒川区)が来春、生まれ変わる。着発線や荷役線の延伸、コンテナホームの拡幅など改良工事を実施中。総工事費は約46億円。うちJR貨物は7割を負担し、同駅の輸送力は年間約22万トン、10トントラックに換算すれば約2万2千台分が増強されることになる。

「コンテナ輸送品質の向上につながる」(田村社長)。貨物駅構内でのコンテナの配置や積み下ろしを管理するシステム「TRACE」は、来年9月までに全面刷新する方針を決めた。荷物を正確に管理するため、04年にすべてのフォークリフトに専用機器を導入。今回、録画カメラやコンテナの重量を推測できるなど新機能を盛り込んだタイプに全面的に切り替えることにした。

 同社の全国の貨物駅にある約530台のコンテナ積み下ろし用のフォークリフトが対象。コンテナの荷役作業中の貨物事故を防止し、「安全性や作業効率を高める」狙いがある。一連の投資額は約23億円にも上る。

2カ所に録画カメラを取り付け、コンテナ荷役作業の状況を動画で保存できるドライブレコーダーを搭載。作業中のコンテナ重量を推測し、モニター画面に表示する機能も装備。フォークリフトの爪に設定値以上の重量負荷がかかった場合に警告を発し、フォークリフトの操縦室に取り付けたモニターで列車の遅延情報を照会できる。

モーダルシフト推進のため自治体から荷主・利用運送事業者に対し、補助金を付与する動きが広がっていることも、JR貨物にとっては追い風だ。例えば、宮崎県は県内の鉄道貨物駅などを経由する貨物の荷主に対し、コンテナ1個につき3千円を補助する。「欧州などでは一般化している。日本でもさらに広がってくれれば」と期待する。

このほか、長距離トラックドライバーの不足もモーダルシフトが広まるきっかけになりそうだ。5年前の道路交通法の改正で大型免許取得者が激減、08年は約4万8千人と07年に比べ3分の1に。高齢化が進み、恒常的なドライバー不足になることが予想される。

国内総貨物輸送量は減少の一途で、10年度は50億トン弱と00年度に比べ2割以上縮小した。一方、JR貨物のコンテナ輸送量はモーダルシフトの流れに乗り、07年度まで増加カーブを描いたが、リーマン・ショックを機に減少傾向に陥っている。

鉄道のCO2排出量は営業用トラックの6分の1と圧倒的に少ない。環境面だけでなく、1度に大量の荷物が運べ、定時性も大きな売り物だ。「荷物のサイズや求められるスピードなど、荷主の需要にきめ細かく対応して顧客を増やしていく」(田村社長)。東日本大震災の災害廃棄物専用列車の運転開始などで注目を浴びたJR貨物が、モーダルシフトでもさらなる輝きを放つために新たな挑戦を続けている。(産業部 阿部将樹)

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