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次のツイッターはどれ?全米の起業家が集うイベントを包む熱気

「SXSW」で話題の新興企業たち

3月9~13日に米テキサス州オースティン市で開催された「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)インタラクティブ」。ミニブログ大手ツイッターやフォースクエア(位置情報を元にした交流サイト大手)が、同イベントで注目されたことをきっかけに、世界的サービスに成長していったことは、起業家の間では"伝説"となっている。今年も、世界中から若手起業家が集結し、サービス内容や最新技術を披露。「第2のツイッター」を探すベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家も多く参加し、会場は熱気に包まれた。

"新興企業の登竜門"とも呼ばれる同イベントで話題を集めた新興企業を紹介する。

(1)インスタグラム(Instagram)

今年のSXSWで話題を集めた「インスタグラム」。共同創業者のケビン・シストロム氏(右)とマイク・クリーガー氏は、スタンフォード大学の先輩・後輩の間柄

「今年のSXSWの勝者」。IT(情報技術)系のベテラン記者陣がこぞって注目企業として名前をあげたのが、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けのアプリ(応用ソフト)を手掛けるインスタグラムだ。スマホで撮った写真を簡単に加工・修正できるソフトで、こうしてきれいに完成した写真は友人間で簡単に共有することができる。

「写真共有サイトとツイッターを組み合わせたようなサービス」。ケビン・シストロム共同創業者は自社サービスをこう説明するが、日本人にとっては「プリクラ(写真シール作製機)のデジタル版」といったほうがピンとくるかもしれない。プリクラの場合、共有するためには友人に会ってシールを直接渡す必要があったが、インスタグラムを使えば、離れたところにいる友人にも瞬時に写真をスマホ経由で転送できる。

「利用者は2700万人」――。注目度に合わせるように急きょ設けられた基調講演で、シストロム共同創業者が現在の利用者数を発表すると会場はどよめいた。インスタグラムが現在アプリを公開しているのは米アップルのiPhone(アイフォーン)向けのみ。iPhone向けに加え、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」向けも手掛けるフォースクエアでも利用者は2000万人程度で、インスタグラムの人気の高さを示した。「もうすぐアンドロイド版も発表する」(シストロム共同創業者)予定で、さらに利用者は急拡大しそうだ。

 サービス開始は約1年半前。シストロム氏とマイク・クリーガー共同創業者のスタンフォード大学卒の先輩・後輩コンビが経営する。2011年末、アップルに「今年のベスト(最も優れた)アプリ」に選ばれた。米メディア報道によると、すでにVC業界では企業価値5億ドルと推計されているという。

(2)ハイライト(Highlight)、グランシー(Glancee)など

ソーシャル・ネットワークの次世代版として登場した新分野「ソーシャル・ディスカバリー」系のネットサービス「グランシー」を率いるアンドレア・バカリ共同創業者。スマホを片手に自社サービスをVCに披露する会合を15分刻みでこなす

「ソーシャル・ディスカバリー(社会的発見)」――。今年のSXSWで、「今後のネットサービスが進む方向性」として提示されたキーワードだ。従来の交流サイト(SNS=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は既存の友人や知り合いを"ネットワーク(つなぐ)"ことを目的としていたが、これからはスマホを使って友人を新たに"発見(ディスカバー)"してしまおうというわけだ。同分野のサービスを手掛けるのは、ハイライトやグランシー、ソナー(Sonar)やバンジョー(Banjo)といった企業で、SXSWの会場各地で講演やデモを行い、利用を促した。

サービスの仕組みはこうだ。フェイスブックやツイッターなどの利用履歴を通じて、出身地や仕事、趣味や関心事などを分析。現在地の近くに「話が合いそうな人物」がいた場合、スマホ上のアプリを通じて利用者に"お知らせ"が届く。お知らせに表示された顔写真や共通点などを元に、近所にいる該当者に話しかければ新たな人脈が広がるというわけだ。

利用者の位置は、スマホに搭載されている全地球測位システム(GPS)を使って把握する。フォースクエアなどの従来型の位置情報サービスは利用者が現在地を毎回「チェックイン」という形で登録する必要があったが、ソーシャル・ディスカバリー系のサービスはアプリが自動的に現在地を把握するのが特徴だ。

グランシーの共同創業者、アンドレア・バカリ氏によると、サービス開始から約8カ月で、利用者は現在1万2000人。「投資に関するVCとの話し合いで、15分ごとに会議をハシゴしている状態」とバカリ氏。セキュリティー上の問題など、ソーシャル・ディスカバリー系のサービスの広がりには懸念を示す意見もあるが、VCが高い関心を示していることは間違いなさそうだ。

(3)ピンタレスト(Pinterest)

「ピンタレスト中毒」――。そんな言葉も登場するほど、「一度使うとはまる」「1時間もやってしまった」と評判なのが、画像収集・共有サービス「ピンタレスト」だ。子供のころ、雑誌で気に入った写真を切り抜いてスクラップブックに集めた経験を持つ人は多いはず。同じことをネットで実現できるようにしたのがピンタレストだ。

「はまる人続出」の画像収集・共有サービス「ピンタレスト」

 利用するにはまず登録し、画像を「ピン(選択)する」機能をパソコンに取り込む必要がある。後は、ネット上で気に入った写真があった時に「ピンする」をクリックするだけで、ピンタレストの自分のページに写真が収集される。「ファッション」や「食べ物」など、写真をカテゴリー別に集めることが可能で、集めた写真を後で簡単に見つけられるのも魅力の1つだ。

他人が集めた写真"集"も閲覧可能で、自分と趣味の似ている人を見かけたら、その人の活動を「フォロー(追跡)する」こともできる。ツイッターは「つぶやき」をフォローするサービスだが、ピンタレストでは写真をフォローする。もちろん、そこで気にいった写真があれば、その写真をピンして自分のページに取り込むこともできる。

まだ試験版を招待制で提供している段階だが、すでに全国紙で「ピンタレスト中毒現象」が取り上げられるなど、初期段階の新興企業のなかでは抜群の知名度を持つ。また、初期段階では男性に利用者が偏りがちなネットサービスが多いが、珍しく女性の利用者が多いことを評価するVC関係者は多い。写真とネット通販をリンクさせるなど、今後の事業モデルもみえやすいことから、今後の飛躍が期待される企業だ。

◇◇◇◇◇

米AOLの創業者スティーブ・ケース氏(右)は、若手起業家が集まるイベント「SXSW」に登壇し、米経済における新興企業の重要性を訴えた

「米国で新たな雇用を生み出しているのは、君たちみたいな新興企業なんだ。4人で始めた企業が3年間で5000人を雇用する企業に成長する。こうした例が米経済の活力なんだ。一方で大企業の雇用者数はこの10数年ほとんど変わっていない」。基調講演に登壇したAOL創業者で、現在はVCとしても活躍するスティーブ・ケース氏は、若手起業家を前に「起業の重要性」を説いた。ケース氏がAOLを創業したのは27年前。現在では政治にも影響力を持つ"大物起業家"とも呼ばれる同氏だが、講演後は舞台を降りて若い起業家たちの質問や悩みに熱心に対応した。

「共同創業者の見つけ方」「VCとの面接準備」「低予算で起業する方法」――。SXSWの会場では起業家たちの具体的な悩みに対応するセミナーが多く開かれていた。"卒業生"にあたるツイッターやフォースクエアの創業者らも駆けつけ、起業にまつわる失敗談やネットの将来などについて意見を披露した。若手起業家を養成する人気予備校のような熱気に包まれたSXSWの会場は、まさに「米経済の活力」を感じさせる現場だった。

(テキサス州オースティン市=清水石 珠実)

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