波力・潮流・温度差…海洋エネルギー「浮上」近し?

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2012/6/18 7:00
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波力や潮流・海流、海洋温度差、洋上風力などを利用して発電する海洋エネルギー開発が実用化・普及に向けて大きく動き出す。実験のネックになっていた実証海域の設定を政府が後押しすることを決め、今後自治体を公募する。実証研究プロジェクトもいくつも始まった。広大な海域を持つ日本での再生可能エネルギーの新たな切り札になる日は近いのか。

政府の総合海洋政策本部は5月下旬、海洋再生エネルギーを利用した発電のための実証海域を自治体と連携して2013年度中に選定することを決めた。海中や海上に構造物を設ける海洋発電は漁業や海運などに影響があるため、あらかじめ関係者と調整済みの実証海域を設け、実験を円滑に進めようという狙いだ。

関門海峡に投入した九州工業大の潮流発電装置は、海上交通の支障が出ないよう岸の近くに設置した

関門海峡に投入した九州工業大の潮流発電装置は、海上交通の支障が出ないよう岸の近くに設置した

海洋発電の実証は発電能力の検証だけでは済まない。海中に長期間沈める構造物は貝や海藻が付着してプロペラなどが動かなくなる恐れもある。重みで装置が沈む可能性もあるという。維持管理費も含めた長期の影響は水槽実験ではなかなかわからない。

日本は機械的な発電技術や造船で培った海中に沈める機器の密閉技術、貝などが付くのを防ぐ特殊な塗装など「個々の技術は最先端」。しかし、欧米に比べ日本は漁業権の調整が難しい。かつて実証場所を変更したプロジェクトもある。

沿岸部では海上交通も重要な要素。関門海峡で3月に潮流発電の実証実験を始めた北九州市と九州工業大は、関門は船の往来が激しいため岸辺の桟橋に発電装置を設置した。水深や潮の流れが十分でなく、本格実験に向けた調整を続けている。

技術はあっても実証実績がなければ世界市場に打って出られない。実験場の確保に時間がかかったり、場所が制約されたりする現状に関係者から「このままでは欧米に後れをとる」という声は数年前から出ていた。世界は実証海域の開設ブームといえる状態だからだ。

最も有名なのがスコットランド北のオークニー諸島の欧州海洋エネルギーセンター(EMEC)。世界初の実証海域で、実験が海の環境を汚染しないようにする必要はあるが、漁業者との調整はほとんど必要ない。海底にはケーブルが引いてあり、発電プラントを設置すればすぐ実験できる。世界から実証実験が集まる。川崎重工業もEMECで潮流発電の実証実験をする予定だ。

EMECだけではない。欧州では05年以降に実証海域が相次ぎ稼働、イギリスのほか、スペインやポルトガルでも実証海域や計画がある。欧州には約30の研究機関と約40の実験施設が連携するネットワークもある。日本政府の実証海域も「日本版EMEC」との位置付けだ。

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