再生エネ"ブーム"で東芝、東レなど続々参入 電力システム改革加速
編集委員 安西巧

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2012/9/18 7:00
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北海道電力は、発電量や周波数が不安定な風力による電力が増えると安定供給に支障が出るとして、風力発電の買い取り上限を泊原発全3基の総出力の約6分の1に匹敵する36万キロワットと定めてきた。昨年8月に風力発電の新たな買い取りを拒む考えを明らかにしたのは、この従来の上限枠を盾に「電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがある」と主張したかったからだろう。

ところが、北海道電力はその1カ月後の昨年9月になって、北海道と本州を結ぶ海底ケーブル(名称は「北本連系線」)を介してつながっている東京電力に出力調整を依頼することで風力発電の買い取り上限を20万キロワット追加し、計56万キロワットに拡大する方針を発表した。世論の批判の高まりに抗せず、改善策を打ち出したのは明らかだった。

全量買い取り制度開始を前に北海道電力への電力供給を望んだ風力発電事業者は78社、総発電設備容量は約187万キロワットに達した。加えてメガソーラーも約90万キロワットの買い取り希望があり、風力と太陽光だけで合計約277万キロワットにまで膨らんだ。これは泊原発全3基の合計出力207万キロワットを上回り、北海道電力の最大需要電力579万キロワット(2010年)のほぼ半分(48%)を占める。

再生可能エネルギーが生み出す北海道の約277万キロワットは、同社管轄の道内の需給緩和のみならず、脱原発による全国的な電力不足を克服する過程でも大きな意味を持つはずだが、現在の北本連系線で送電できるのは60万キロワットが上限。電力会社間の命綱と呼ぶにはあまりに心もとない。北海道で生まれる再生可能エネルギーによる電力を全国的な電力需給緩和に結びつけるには「地域独占」を突き崩し、「発送電分離」によって全国規模で電力を融通し合える体制への移行、すなわち「電力システム改革」が不可欠なのである。

今年7月13日、経産省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東京大学教授)は「発送電分離」を進める「改革の基本方針」を決定。これに対し、電力会社の業界団体である電気事業連合会は同日開催の委員会で「課題の洗い出し、解決策の検討に最大限に協力していく」と発送電分離を容認する姿勢を打ち出した。

最大の政治力を維持していた東京電力が福島事故で破綻状態に追い込まれ、関西電力など同業他社も、原発の運転停止に伴う代替火力発電用の燃料費負担の増加で収益が悪化、12年3月期は中国電力、沖縄電力を除く7社が軒並み最終赤字に転落した。

貧すれば鈍す――。スポンサーとしての資金力が細り、高まる一方の「原発ゼロ」の世論動向を見て、永田町や霞が関の空気も変わりつつあった。電力業界は徹底抗戦をあきらめ、発送電の「分離」方式を有利に進める"条件闘争"に切り替えたように見える。「再生エネ"バブル"」が突き動かす形で電力システム改革は大きな一歩を踏み出した。

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