タイ洪水が浮き彫りにしたインドシナの森林・環境破壊

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2011/10/17 7:00
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11月下旬から南アフリカのダーバンで開催される第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)。2012年12月末に京都議定書に基づく温暖化ガスの削減期間が切れるのを控え、13年以降の削減目標設定で反目し合う先進国と途上国の意見をいかにまとめるかが焦点になる。途上国側が、中国や米国を含む主要排出国に一段の削減対策を迫る材料になりそうな事態が今月、タイで起きた。

タイのアユタヤ県にあるホンダの工場は、洪水で孤立した(10日、ロイター)

タイのアユタヤ県にあるホンダの工場は、洪水で孤立した(10日、ロイター)

世界遺産として知られるタイ有数の観光地で、同国製造業の一大中心地でもあるアユタヤを飲み込んだ大洪水だ。同国に進出している日本メーカーが構築したサプライチェーンをマヒさせた。

タイには大小合わせて7000社近い日系企業が進出している。特に洪水被害の激しいアユタヤ県にある工業団地にはホンダ、キヤノン、ニコン、ソニーなどが拠点を構え、部品から完成品までをつくり上げる産業ピラミッドを完成させている。

進出企業からは「洪水がいつ引くか先が見えない。東日本大震災より影響は深刻だ」との悲鳴があがる。タイでは雨期明けが近い10月ごろに雨量が急激に増え、洪水は毎年起こるが、規模は限定的だ。工業団地が冠水することは極めて珍しく、立地を選定する日本企業にとっても想定外だった。

だが、今年の洪水は「過去数十年で最悪」(タイ気象局)。6~7月から大雨が多く、例年ならインドシナ半島に接近する前に勢力が弱まるはずの台風が幾つも上陸して猛威を振るった。タイ地理情報宇宙開発機構(GISTDA)のホームページで洪水監視システムを見ると、同国東北部や北部のスコータイやピサヌロクから首都バンコク北辺まで、山間地を除いて洪水被害が広がっているのが分かる。

タイ地理情報宇宙開発機構のホームページ上にある洪水モニタリングシステム。赤は今月6~10日に冠水した地域、青はそれ以前に冠水した地域(日本語版のグーグル地図に表示)

タイ地理情報宇宙開発機構のホームページ上にある洪水モニタリングシステム。赤は今月6~10日に冠水した地域、青はそれ以前に冠水した地域(日本語版のグーグル地図に表示)

だが、単に「異常気象のせい」(タイのインラック首相)では片付けられない面もある。タイを中心にインドシナ各国で経済成長が進むなか、急激な森林破壊や農村から都市への人口移動、インフラ開発などが大規模洪水の発生の要因の一つになった可能性が指摘されている。

その中でも最も影響が大きいとみられるのは熱帯雨林の急速な減少だ。これは森林の保水能力の低下に直結する。経済成長につれ国土開発が進み、タイの森林は東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも特に速いペースで減少した。

国連食糧農業機関(FAO)の調べによると、タイの森林は販売目的の伐採や開発などで過去20~30年間で急速に失われた。1980年から90年までの10年間の森林減少率は年率3.3%とフィリピンに並びASEAN最大で、90年の林野率(国土に占める林野の割合)は25%まで低落した。現状では一段と減少している可能性が大きい。

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