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行動履歴を解析、店舗に誘客 NTTが描く「買い物の未来」

NTTがネットとリアルを融合した「未来の買い物」の実験にグループを挙げて取り組んでいる。阪急阪神グループ、博報堂と組んで昨年10月に関西地区で始めたO2O(オンライン・ツー・オフライン)マーケティングの実証実験だ。消費者をスマートフォン(スマホ)で店舗に誘客し、購買行動や鉄道・バスの乗降履歴をビッグデータ解析して次の買い物につなげる。国内の通信市場が飽和する中、NTTは通信インフラとデータ事業の融合にグループの未来の姿を描く。

入り口の専用端末にスマホをかざすと来店ポイントがもらえる(兵庫県西宮市の「阪急西宮ガーデンズ」)

阪急電鉄「西宮北口」駅から徒歩3分。約270店舗が軒を連ねる西日本最大級の複合商業施設「阪急西宮ガーデンズ」(兵庫県西宮市)が実証実験の舞台だ。スマホを片手に巨大なショッピングモールを歩いてみた。

入り口に並んだ専用端末にスマホをかざすと、来館ポイントが5ポイント(1ポイント=1円)たまった。店内に入るとスマホにダウンロードした「阪急西宮ガーデンズアプリ」が起動し、公衆無線LAN(構内情報通信網)のWi-Fi(ワイファイ)に接続。位置情報のボタンを押すと自分がいる場所がスマホ画面の中の店内地図上に表示された。行きたい店を指でクリックすると道案内してくれる。

「全地球測位システム(GPS)では居場所を立体的にとらえることができないが、Wi-Fiなら何階のフロアにいるかまで表示できる」とNTT西日本の市橋直樹ビジネスデザイン部担当課長は解説する。大人でも迷子になりそうな巨大モールだけに便利なサービスだ。

車で来た場合は駐車場からの入り口にある地図にスマホをかざせば、駐車位置が登録される。飲食店や服飾店の店頭にはタブレット(多機能携帯端末)が置いてあり、スマホの中に割引クーポンや来店スタンプを取り込める。飲食店では店頭のタブレットで予約すると、自分の順番になると電話がかかってくる仕組みも。行列待ちが不要になり、食事の順番まで買い物が楽しめる。

実験にはNTTグループ4社(持ち株会社、NTT西日本、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ)と阪急阪神ホールディングス、阪急阪神カード、博報堂の計7社が参加する。阪急阪神カードが昨年10月に始めたスマホ会員サービス「SMART STACIA」の会員(現在2万2000人)が対象で期間は今年5月まで。NTTグループがインフラ整備やビッグデータ分析を担い、博報堂は消費者マーケティングで参加する。実験は西宮ガーデンズのほか、大阪・梅田地区でも同時に実施している。

 「店舗で実物を見てネット通販で安く買う『ショールーミング』の逆を提案したい」と阪急阪神カードの西水卓矢社長は意気込む。以前、宝塚歌劇団のコンテンツ配信でNTTグループと組んだ西水氏の発案で今回の実験が実現した。クレジット事業を手掛ける阪急阪神カードだが「クレジット事業でもうけるよりも鉄道、商業施設などグループ事業全体への誘客が当社の使命」(西水社長)という。

NTTの研究所は商業施設内の消費者の回遊情報を可視化する

NTTグループにとっても東西地域会社の成長戦略は喫緊の課題だ。「固定通信の利用者が伸びない中で、Wi-fiを活用したO2Oビジネスで地域密着型のサービスを育てる」とNTTの鵜浦博夫社長も期待を込める。今回の実験はNTT西を軸にドコモ、コムなどグループの総力を結集。普段は横の連携が少ないNTTグループとして異例の力の入れようだ。

消費者の行動をビッグデータ解析するのがNTT持ち株会社の研究所だ。従来は消費者の「属性」と「購買履歴」など2つのデータの関係性を分析するのにとどまっていたが、これに「乗降履歴」や「位置情報」を加えた3つ以上のデータを同時に解析する独自の技術を導入した。

例えばこれまでのマーケティング手法なら顧客情報から「20代の女性」といったカテゴリーを作って購買行動を分析するのが一般的。しかし今回は「平日夜に電車で来店して女性向けの店舗に立ち寄る客」や「週末に車でやってきて子ども向けの店で買い物をする客」など、消費者を行動パターンで分類し、きめ細かいマーケティングに生かすことが可能になる。

また顧客の位置情報からモール内での動きを分析すれば「買った店」だけでなく「立ち寄ったが買わなかった店」もデータとして残る。こうした回遊情報から店舗の出店計画やモール内での配置を見直すことも可能だ。具体的なマーケティング分析はこれからだが、ビッグデータという「宝の山」をどう生かすかがカギを握る。NTT研究企画部門の原田素子担当部長は「研究所が商業施設という生のデータを扱うのは初めてで刺激的」と話す。

一方、顧客情報の取り扱いには徹底的に気を配っている。ビッグデータ分析の際は顧客データを匿名で扱うのは当然だが、「顧客データはNTTの研究所まで新幹線で持ち運んでいる」(研究企画部門の宮武隆担当課長)。情報セキュリティーだけはオフラインの方がまだまだ安心できるようだ。

(産業部 磯貝高行)

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