米アップル参入で花開く電子書籍市場
出版社や書店、著者の取り組み加速

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2013/3/14 7:00
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「デジタル優先」の動きは出版業界全体に広がる。講談社も菅原雅雪氏の新作コミックを電子書店限定で発売した。さらに入手困難な絶版本を2012年に電子書籍で復刊。交流サイトで候補作品を募り、これまでにネット競売で定価の数倍の値が付く皆川ゆか氏の作品など6作品を刊行した。小学館も料理のレシピ本を2012年から電子書籍専用にすでに4点刊行している。

米アップルの電子書店「iブックストア」の画面

米アップルの電子書店「iブックストア」の画面

書き下ろし小説を複数回に分けて順次配信する新しい試みも始まる。中堅出版社の幻冬舎は小路幸也氏の長編小説「旅者の歌」を1日から5回に分けて3月中に刊行を開始している。1回目は無料で2回目以降は315円と買いやすい価格にした。雑誌に近い連載形式をとることで、気軽に読み始めてもらうのが狙い。

著者や出版社の熱の入った取り組みを支援しようと電子書店側もさまざまな知恵を働かせる。後発となったアップルは、音楽配信サービス「iTunes(アイチューンズ)ストア」で楽曲を購入するのに近い、簡便な購入手順を導入。無料で配布する電子書籍閲覧アプリを入手すれば、スマートフォン(スマホ)の「iPhone(アイフォーン)」やiPad上で1クリックで電子書籍を購入できる。直後にダウンロードが始まりすぐに読書を始められるようにした。

新たな書籍の出合いも演出する。スタッフがお薦めの書籍をテーマ別に紹介。例えば「読者のおすすめ」「文学賞受賞作品」「ティーン向けフィクション」「今月の新刊」などがある。「映画化タイトル」では映画になった原作本とその動画コンテンツを併せて紹介。音楽・動画・書籍全てを配信するアップルならではの強みを生かし、リアルな店舗の書店とはひと味違った"陳列"で読者の気を引こうとする。

先行するアマゾンは値引きで応酬。「Kindle本セール」の名称で一部書籍を割引販売する常設コーナーを設けている。1週間ごとに作品を入れ替え、紙の価格の半額のものや中には7割引きの場合もある。例えば13日時点では、誉田哲也氏の小説「国境事変」が紙より58%安い300円で買うことができる。同社は「Kindleセレクト25」と呼ぶ10%のポイント還元が受けられるコーナーも用意している。

「電子書籍元年」とされた2012年度の国内電子書籍市場は、調査会社インプレスR&Dによると前年度比13%増の713億円になる見通し。16年度には2千億円に急伸すると同社はみている。電子書籍先進国の米国では、全出版物のうち電子書籍の売り上げが占める割合が既に約2割に達した。一方、日本の出版市場は8年連続でマイナス成長が続く。5年遅れで本格普及が始まった日本でも電子書籍がけん引役になれば、出版全体の活性化につながる可能性がでてくる。

(産業部 高田学也)

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