クラウドと融合する高速ゲノム解読
編集委員 永田好生

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2010/10/15 7:00
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生物の「設計図」ともいえるゲノム(全遺伝情報)を高速で解読するサービスが相次ぎ登場している。最先端の解読装置は繊細で扱いにくいうえ、得られる情報量も膨大で、高度な専門技術が必要なためだ。今後、ネットワーク経由で計算機能を活用するクラウドコンピューティングとゲノム解読が融合すれば、高速・低コストで正確なデータ処理が可能になり、医療や農水産業の進歩に役立つと期待されている。

米ヘリコス社の最新鋭の高速ゲノム解読装置(横浜市の理研で)

米ヘリコス社の最新鋭の高速ゲノム解読装置(横浜市の理研で)

国のゲノム解読拠点に指定されている理化学研究所。高速の解読装置がぎっしりと配置された横浜研究所(横浜市)の一室に、業務用冷蔵庫のような機種が4台並ぶ。米ヘリコス・バイオサイエンシーズ(マサチューセッツ州)が開発した最先端の「ヘリスコープ」だ。世界の主要な解読拠点で試験運転するために設置され、日本では理研だけにしかない。

この装置は生物にとって設計図の役割を果たす遺伝子の塩基配列を、1分子ずつ読める新技術を取り入れている。塩基配列は、細胞核の中のDNA(デオキシリボ核酸)に暗号のように書き込まれ、現在、最も普及している最新のゲノム解読装置(第2世代)は、1日に1台で1億~20億個の塩基を読める。第3世代の先駆けとされるヘリスコープは、同100億個程度になるとみられる。その性能を大学など別の機関の研究者にも役立ててもらおうと、理研は受託解析を始める計画だ。

しかしまだ、すぐには解読に使えない。林崎良英・オミックス基盤研究領域長は「とても繊細な装置。半年ほど調整した後でないとだめだろう」と話す。例えば温度の管理。セ氏0.5度上下に変動するだけで誤信号が増え、正確な塩基配列を読めなくなる。米国から派遣された技術者が付きっきりで準備を急ぐ。

第2世代の解読装置は国内に150台近く設置されているようだ。そこでも解読した情報量の多さに閉口する研究者の声が聞こえてくる。塩基配列の情報だけではその配列の機能は分からない。DNAのどこに位置し、どんな役割を担っているのかを突き止めなければならない。その作業はコンピューターの処理に任せるしかなく、情報処理に通じた専門家が必要だ。あふれる塩基情報を前に、お手上げのバイオ研究者が多い。

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