「同じ部署の人の隣に座ってはいけない」 大部屋開発の復権
日経ものづくり編集委員 木崎健太郎

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2012/8/14 7:00
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ホンダがグローバル市場における自動車の開発体制を大きく転換しようとしている。これまで栃木県・芳賀町の本田技術研究所にあった日本向け軽自動車の開発機能を2012年4月、軽自動車の生産拠点である鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に移転した。同社はこうした、開発機能を製造拠点に移転する取り組みを、鈴鹿に続いて中国など新興国の製造拠点にも展開していく方針だ。

ホンダは「N BOX」の量産準備で大部屋連携開発を実施(鈴鹿製作所の「N BOX」の生産ライン)

ホンダは「N BOX」の量産準備で大部屋連携開発を実施(鈴鹿製作所の「N BOX」の生産ライン)

鈴鹿製作所には大きなスペースに設計、購買、生産技術、製造の部署が集結する。ここを営業担当者が頻繁に訪問し、計5部署が一体となって開発に取り組む。目的は、日本のユーザーに軽自動車をスピーディーに届けること。通常なら3~4年を要する開発を、3カ月~1年分短縮する。

大部屋で開発期間を短縮できるのはなぜか。ホンダは既に、11年12月に発売した軽自動車「N BOX」の量産準備の際に一時的に大部屋連携開発を実施し、量産化までの期間を約3カ月分短縮した実績を持つ。このN BOXの大部屋連携は、実は東日本大震災によってやむにやまれず実行したものだった。

震災によって、開発部隊が在籍していた栃木県芳賀町の本田技術研究所四輪R&Dセンターは、屋根が崩れ落ちるなど甚大な被害を受けた。この頃、N BOXの開発は量産準備の初期段階。量産のための金型図面を出図しなければならなかったが、設計に使うコンピューターががれきの下に埋もれてしまった。ホンダは「栃木で出図できなくても、鈴鹿で出図すればいい」と、開発部隊の一時的な移転を決意した。

この体制が軌道に乗ってくると、「栃木にいた時より仕事が早く進む」(本田技術研究所四輪R&Dセンター鈴鹿分室室長の今町真浩氏)ことが分かってきた。例えば、「部品を組み付けにくいので改良してほしい」といった製造側からの要望で設計変更を実施する際、従来は鈴鹿の製造部門と栃木の開発部門がメールや電話で協議していたため、約1週間を要していた。しかし鈴鹿では、設計者が現場に出向いて現場・現物・現実を前に製造側と協議する。決断権も栃木から鈴鹿に移されていたため、設計変更を1日で実施できるようになった。

本社の全部署が集まるスノーピークの大部屋。商品開発、購買、品質保証、製造、営業などが集結している。

本社の全部署が集まるスノーピークの大部屋。商品開発、購買、品質保証、製造、営業などが集結している。

同じように「大部屋」による部署間の連携に取り組むのがアウトドア製品やアパレル製品などを手掛けるスノーピーク(新潟県三条市)だ。同社が11年4月に開設した「スノーピーク ヘッドクオーターズ」に大部屋を設け、開発、製造、品質保証、購買、総務など全ての部署が共に机を並べている。大部屋の効果を高めるため、「同じ部署の人の隣に座ってはいけない」「昨日と同じ場所に座ってはいけない」という2つのルールも設けた。今や全員が、どこの部署で何が起こっているのかを把握している。

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「日経ものづくり」より

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