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スズキ会長「放置すると経営の足かせに」 VWと提携解消

スズキは12日、独フォルクスワーゲン(VW)との業務提携と資本関係を解消すると発表した。記者会見での主なやりとりは以下の通り。

鈴木修会長兼社長の冒頭発言

「提携から1年9カ月。VWを『家庭教師』として技術供与を受け、環境車の開発を加速することが最大の目標だった。出資受け入れは先方から技術協力のために一定の資本関係を求められたためで、スズキは『受け身』の立場。財政的な問題もなかった。提携関係は事実上滞ることが多く、困難だった。19.8%のマイナーな出資比率ではスズキの期待した技術移転の効果が得られない」

「VWが今年3月の前年度の決算報告で影響力を与えられる会社としてスズキを位置付けたことに大変驚いた。フェルディナント・ピエヒ会長もマルティン・ヴィンターコーン社長も出ていた提携記者会見で『連結に影響しない』ということは確認していた。ヴィンターコーン社長は『スズキが言った通り』だと語っていた。私の経営哲学である『自主独立』を理解してもらっていたはずだが、だんだんおかしくなり、相いれないことが分かってきた。このまま放置するとスズキの経営の足かせとなる」

「7月28日にカール・ハーン元社長が来日した。20年前にVWとスペインで小型車を一緒につくるプロジェクトをやっていた時の社長だ。なぜこうなったか非常に和やかな雰囲気で4時間黙って聞いていた。彼が大学ノートに書き取ったメモは13ページに及んだ」

「だが、その翌日の29日に1~6月の中間決算で財務担当役員がスズキとの関係見直しを表明した。ハーン氏の報告を反映した上でのものと受け止めた」

「業務提携を解消する以上、スズキ株の返還を求める。相互に相手の言い分に基づいて処理する。資本提携していない他の自動車メーカーともOEM(相手先ブランドによる生産)供給などで仲良くやっている。今後も対等にやれると思っている。深入りした後で経営哲学が対立するよりも早く(提携解消になっ)て良かった」

質疑応答

――具体的にどんな技術をVWから得ようとしたのか。

原山保人副社長「契約上、詳細な内容の開示は難しいが、環境分野において提携直後からスズキのブランドで販売する車の開発協力はあった。スズキでも社内開発をしていたが、それを加速するためにVWの技術情報の活用を求めた。アウディなどVWのグループ内の技術へアクセスするルートがあると思ったが、マイナーな出資比率ではアクセスに著しい制約があった。(一緒に)環境車の開発はできないという現実がかなり早い段階で明らかになった」。

「さらなる協力の糸口を見つける努力もしてきた。詳細は省くが、VWは情報交換をしただけで、秘密保持協定の観点でスズキの行動に制約を設けようとしてきていた。これでは利益がないだけでなくスズキの発展に足かせになる。VWとの様々な困難な調整に時間を費やすよりも独自に開発した方がはるかにスズキのためになる。誤解を恐れずに言えばVWとの調整で時間を浪費しなくなった昨今では、開発は加速している」

――両社の経営哲学の違いとは。

鈴木会長「他社の連結対象となるのを避けるのは業績で他社に迷惑をかけないため。これが私の一貫した哲学だ。自前でコツコツやりながら、いろんな点で苦労して今日の企業規模になってきたと自負している。他に依存するということは考えていない。グループの中に入って言うことを聞けというのであれば50%を(最初から)持てばいい。経営哲学を曲げてまで企業のあり方を変えられない。技術は有償で提供を受けるもので無償でもらおうとはしていない」

「VWが伊フィアットからのディーゼルエンジン調達を契約違反と言うのは心外だ。1月28日に浜松でヴィンターコーン社長とは1メートルも離れていない目の前で向かい合ってやり取りした。エンジンの排気装置を前方と後方どちらにつけるか、車体の高さなど、技術的な問題があるので1.6リットルのディーゼルエンジンは他社から調達すると伝えた。『それなら文書で連絡してほしい』ということだったので31日に文書を作った」

「さらにVWから技術提供を受けた場合、成果物を他社のブランドで売れなくなる問題もあった。これだとスズキがOEMで他社に供給する28万台分の販売がなくなってしまう。これらは3月11日、25日、7月14日とやりとりした中で解決済みの問題だ。なぜ今ごろになって違反と言われるのか不思議だ」

「VWはスズキを『有望な投資先』としているが、投資目的で株を持ってもらったわけではない。環境車開発の技術情報のためだ。スズキ株の利回りは0.85%程度。投資目的ならもっと配当のいいところがある。VWの目的が変わっており、矛盾があるのではないか」

「提携解消は離婚と一緒。お互いに揚げ足をとるより、にっこり笑って縁がなかったと別れるのがいい。あんまり事実関係を言うと品が下がる。あえて話したのはVWから言われたから」

「それよりスズキ独自で技術開発を加速させる。技術陣は昨年の6月までは頻繁にVWに行っていた。あれをよこせ、これは見せないというやりとりで厭戦(えんせん)気分になっていた。今は会長を心配させないようにと奮起してやっている。他社に頼るよりも自社の技術陣を信頼してやっていく」

 ――資本提携はもうしないのか。

鈴木会長「懲りたことは確か。文章でどれだけ書いても心と心の通い合いがないといけない。ドイツと日本で文化的な違いがあるのかなと思った。過去より前向きの話をしたい」

――VWが保有するスズキ株は自社株買いするのか。

鈴木会長「自己資金での買い取る方針ははっきりしている。新規借り入れの必要もない。現在の自己資金で余裕を持って返してもらえる」

――提携は一方的に解消できないのでは。

鈴木会長「提携解消の申し入れは離婚と同じ。1年9カ月の清算をしないといけない。進んでいるプロジェクトは何もない。非常に簡単にできる。問題は株式。先方は気に入らないだろう。スズキもVW株を439万株持っているが、お互いにチャラにしたい。株も売らず、(実際の業務提携は)何もしないということになるとVWの株主が困る。2000億円以上つぎ込んで何をしているのかということになる」

――VWは「対話で解決したい」との意向を発表したが。

鈴木会長「もう解消を申し入れた。解消のための具体的な処理法の協議、戦後処理はやらないといけない。考え方は決まっていて変えるつもりもない」

――VWが敵対的買収に出るリスクもある。

鈴木会長「馬を川に無理につれていっても水を飲まない。権力や資金で強制するのはお互いに不幸だ。人間は感情や理性を持った動物であり、友好的にとことん話し合いをしていく」。

――出資時に比べ株価が下がっており、買い取りには損が出るが。

鈴木会長「株価はマーケット次第だから難しい。円高になり為替差益もあるので騒ぐほどではない」

――VWが契約違反で違約金を請求する恐れもある。

原山副社長「VWが違反と指摘するフィアットからの調達には1年以上の経緯がある。VWがスズキが求めるものを供給できないというのが事実で、全く違反には当たらない。VWは別の件でも契約違反を指摘してきている。我々の方から違反を指摘したいことも多々ある。これは宣戦布告のようなやりとりになる。対等な提携相手に対し最後通告のようなことをしては友好的に協議できない。これが発展するとすれば契約解除だ。VW側が契約を解除したいのかと思わざるをえない」

鈴木会長「原山副社長は交渉の当事者で多少興奮しているが、お互いに笑って分かれるということ。またどこで会うか分からないので。結婚・離婚と同じでもっと和やかに解消する努力をしたい。お互いに話せば分かる」

「こっちの業績を早く上げないといけない。一昨日インドから帰ってきたところだが、世界不況の中、(収益源の)インド市場だけがいいわけはない。17社の追撃を受けており、『スイフト』や『ワゴンR』も分析され丸裸だ。(インド市場では)ディーゼルエンジンが7割近くを占める。ガソリンとディーゼル向け燃料の差額は10ルピーから22ルピーに広がり、ディーゼルが急激に売れ始めた。(政策的には)ガソリンの価格高騰は野放しだが、ディーゼル向け燃料価格はある程度抑える方針だ。予断を許さない状況で馬力を上げて挽回したい」

 ――4副社長による合議体制は今回の判断にどう影響を与えたのか。

鈴木会長「4人の副社長には個性がある。違った意見を言うのでお互い啓発され、相互に研さんできる。ざっくばらんに意見交換している。今回は4人が満場一致で決済した。見事に一致した」。

――なぜ今日発表となったのか。

鈴木会長「ここ1カ月は議論が平行し、膠着状態だった。ハーン元社長の来日後は向こうも見直しの方向だった」。

――提携は経営判断ミスだったのでは。

鈴木会長「私が最高決定者であり、責任があるとすれば私の問題だ。健康にも恵まれ、4人の副社長も元気にやっている。今後は環境車を中心とした開発を推進したい。技術的に軽自動車を中心に小型車でアジア向けに開発してきた。大きな車中心のVWとは研究の対象が違っている」

「インドでは1300ccのディーゼルエンジンが約20万台売れ、今年は30万台行くと思う。ガソリンエンジンで他社の小型車が話題になっているが、そこそこやっていけると思う。ハイブリッド、電気自動車燃料電池。亀の歩みかもしれないが、(環境車分野で)ほどほどにやっていけるだろう。開発を加速しながら独自でやっていきたい」

――今後の提携相手に求める条件は。

鈴木会長「大人の考え方でつきあっていくのが必要とつくづく思った。人間と人間の心の持ち方がどうであるか。お互いに性格もある」

――提携解消に向けVWの首脳と話をしているのか。

鈴木会長「スズキでは交渉から帰ってきたら副社長4人で共有し、私に最終報告が来るまで1時間もかからない。月水金はいつも昼ご飯を食べている。逆に向こうは大変なようでなかなか真意が伝わっていない」

――VWとはどんな情報交換をしていたのか。

原山副社長「提携直後から様々な情報を交換し、秘密保持契約を結んで我々からもいろんな情報を提供した。我々の環境車も向こうに貸し出して分析してもらうということもあった。惜しみなくかどうかは分からないが誠意を持って情報交換してきたつもりだ」

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