2019年3月20日(水)

「青空文庫」一転曇り空? 作品数、大幅減の懸念
著作権切れの電子書籍 TPPで延長交渉浮上

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2013/7/21 7:00
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著作権の保護期間を延長することによるメリットとデメリットとは何か。市村弁護士は「コンテンツを流通させる事業者のやる気を高めることは間違いない」とメリットを強調する。手本となるのは「ミッキーマウス保護法」と揶揄(やゆ)されつつも、著作物の保護期間延長を繰り返してきた米国だ。ウォルト・ディズニーなどの超有力コンテンツを武器に国外から得る収入は年間10兆円とされる。

一方、デメリットも少なくない。第1は、日本が払う著作権利用料が当面増える方向に働くことだ。日本は2011年、海外に7000億円強の著作権料を払っており、うち6割以上が米国だ。逆に米国からの受け取りは支払額の4~5分の1程度にすぎない。第2は、期間延長がごく一部の有力コンテンツ以外の、他の著作物の利用の妨げになりかねないことだ。著作権切れのコンテンツを対象とした青空文庫はそうした例の一つだ。

実は青空文庫以上に危惧されている問題もある。いわゆる「オーファン・ワークス(孤児となる著作物)」問題だ。保護期間が残っているが、有力コンテンツではないために、権利関係が不明となった著作物を指す。作者が亡くなった小説やマンガや詩、教科書や学校の試験問題に掲載された学者の文章などが代表で、権利の相続や譲渡などにより、権利者が不明になるものは著作物の大半を占めるとされる。

保護期間が50年から70年に延長されれば、オーファン・ワークスに対する調査や権利関係の確認に費やされる期間も長くなる。参考書の発刊や「復刻版ビジネス」などに悪影響を及ぼす。文庫や詩集などを復刻する際、一部でも権利が不明な著作物があれば、完全な復刻版は発刊できない。映画や放送番組の中に権利不明な著作物が映っていれば、DVD化やネット配信などが難しくなる。

実際の保護期間延長までには多くのハードルがある。交渉が順調に進み、今年末までに妥結できたとしても、著作権法改正案の策定と調整、国会での議論などに「少なく見積もっても法施行までに2年以上はかかる」(著作権法に詳しい弁護士)とみられる。保護期間の延長で笑う人もいれば、泣く人もいるが、政府にはデメリットを最小限にする方策を提示することが求められそうだ。

(蓬田宏樹、編集委員 渋谷高弘)

[日経産業新聞2013年7月16日付]

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