/

「原発立国」に暗雲 原発事故で電力供給不安が長期化

東京電力の福島第1原子力発電所の被災により、家庭や企業などへの電力供給が不安定になることは確実だ。他の電力会社からの電力供給量も限られ、生活に欠かせない電力不足は長引く見通し。原発の新規建設への警戒心が強まることも避けられず、官民そろって目指してきた「原発立国」に暗雲が垂れこめている。

「通常は余裕を持っているが、今回はマイナス。不足分は顧客への電力供給を絞らざるを得ない」。東電の藤本孝副社長らは12日昼の記者会見で、異常事態であることを認めた。

東電の供給力は3700万キロワット。12日は節電の呼びかけもあり、需要は3600万キロワットに収まったもようだが、週明け以降は電力需要が拡大するとみられ、不足分は500万から1000万キロワットに達する可能性がある。「頼れるのは火力と(稼働中の)原子力だけ」と話したが、被災した福島第1、第2原発の稼働が見込めない。

頼みの綱である電力融通も期待できない。電力会社は自社で足りない分を他の電力会社から買うこともあるが、東電と同じく周波数50ヘルツの電力は、大きな被害を受けた東北電力や遠隔地の北海道電力だけ。60ヘルツの中部電力から融通しても、周波数変換設備の能力から受電量は限られてしまう。

東電の福島第1、第2原発の設備容量は約910万キロワットで発電量では東電全体の約2割を占める。07年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発は再稼働まで1年10カ月を要した。いったん大きな被害を受けた原発の修繕には時間がかかり、柏崎刈羽は今なお全機を再稼働できない。

炉心溶融が発生したとみられる今回の事故は柏崎刈羽原発の被災状況を大きく上回る。福島第1、第2原発の運転停止は長期化する見通し。07年当時に電力供給を頼った東北電力の原発も被災しており、電力需給の逼迫は中越沖地震の時よりも深刻になりそうだ。

中長期でも電力各社の原発新増設計画に深刻な影響を与えるのは確実だ。東電をはじめとする電力各社は、低炭素化社会対応の切り札として原発の新増設を相次ぎ打ち出している。政府が昨年まとめた「エネルギー基本計画」に沿って、電力各社は2030年までに14基の原発を新増設し、国内全体で発電量に占める原発比率を34%から70%に高める方針。

中部電力が同社唯一の原発である浜岡原発で6号機の新設を打ち出したほか、東電も福島第1原発で7、8号機の増設と青森県・東通原発の新設を計画している。しかし、今回の事故によって地元の強い反発が予想され、計画自体が宙に浮く可能性がある。

日本は世界的にも長年の運転実績をもとに原子力を軸にした低炭素化社会を目指すエネルギー政策を推進してきたが、根本から見直しを迫られそうだ。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン