タイ洪水、日系企業の被害拡大 操業停止長期化も
トヨタ、部品緊急輸送へ
タイの洪水被害が一段と拡大する恐れが出てきた。これまで被災を免れていた中部アユタヤ県の「ハイテク工業団地」で12日午前、防水壁が破損し一部が浸水。政府は大規模な浸水の危険が高まっているとして、工業団地内に残る従業員や周辺住民に退避勧告を出した。
ハイテク工業団地はバンコクの北60キロメートルに位置し、キヤノンやソニー、HOYA、味の素などが入居している。タイ工業団地公団の要請で7日から多くの企業が生産を中止。ソニーも11日からデジタルカメラ工場の操業を停止した。12日は防水壁の一部が壊れたため修復、午前11時(日本時間午後1時)時点では状況悪化を食い止めている。
洪水被害の拡大に備え現地の日系企業は対策に追われている。トヨタ自動車はタイで生産が止まった部品を代替するため日本から緊急輸送する検討に入った。
トヨタがタイに持つ3つの完成車工場は直接の被害を免れているが、部品の供給不足で15日までの全面停止を決めた。浸水したアユタヤ県ロジャナ工業団地の取引先からのゴム部品やシートベルト部品などの供給が止まっている。代替品の確保に向け担当者を現地に派遣、不足する部品を特定し国内の部品メーカーに協力を要請する。
同工業団地にあるホンダの四輪車工場は退避命令が出されているため近づけない状況が続く。バンコクにある二輪車工場は直接の被害はないが治水対策のため11日に休止した。12日以降も部品不足のため操業停止を決めた。
別の工業団地にある日産自動車の工場でも一部車種向けの部品供給が止まったという。
ニコンも同工業団地でデジタル一眼レフなどを生産している。ニコンは日本からも社員を派遣し情報収集にあたっている。デジタル一眼レフの在庫は1カ月程度と見られる。本来なら年末商戦に向けて在庫を積み増す時期だがすぐに操業できない可能性が高い。
タイ工業団地公団によると排水開始は11月からになるとみられる。(バンコク=高橋徹)